思考・葛藤・重圧・責任
佐々木寿人、
決断までの128秒
文・東川亮【月曜・木曜担当ライター】2022年2月22日
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128秒。
大和証券Mリーグ・2月22日の第1試合、佐々木寿人が最終手番に費やした時間である。Mリーガー32名で最も打牌が早いと言われる男による、かつて見たこともないような大長考。このクライマックスに至るまで、約2時間のロングゲームには数々の見せ場やドラマがあった。
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第1試合
東家:多井隆晴(渋谷ABEMAS)
南家:村上淳(赤坂ドリブンズ)
西家:萩原聖人(TEAM雷電)
北家:佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
麻雀星人・多井隆晴の地球侵略
調査の結果、渋谷ABEMAS多井隆晴選手を麻雀星人に認定します。宇宙から来た仲間として今後も応援していきたいと思います。#Mリーグ #麻雀 #麻雀星人 https://t.co/WNSraulHbG pic.twitter.com/1GbErRoON9
— 日清焼そばU.F.O.公式 (@nissin_u_f_o) February 22, 2022
Mリーグには、麻雀星人と認定された選手がいる。渋谷ABEMAS・多井隆晴である。
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麻雀星人は、つまらない手では前に出ない。東3局、村上がポンをした場面。そこそこまとまった多井の手に使い道のなさそうなが訪れるが、多井はそれを切らず、
を切る。村上の現物である。
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残したに
がくっついて123三色が見える形になったが、多井はメンツを壊す
切り。自身の手は未だメンツ一つ、アガリまでは遠そうで高打点にならない可能性も高い一方、子方で役牌1鳴きの村上は打点も形もまずまずありそう。そんな読みから、村上に鳴かれそうな
をケアした、ということだろうか。
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村上は赤赤の手牌で、はポンできる牌だった。自身の手格好で
を鳴かせてしまう打ち手が大半だと思われるが、自分と相手の手材料や進行具合を総合的に見極め、価値の低い手を思い切って見切るところが、多井の高い守備力を支えている。
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東3局1本場では、ドラ受けのペンチャンターツを残してと切っていく。
が3枚切れていて価値が大きく下がっているが、それでも思い切った進行。そもそも2巡目の白をスルーしており、この手はドラ
が入った好形テンパイのときだけ前に出る、という進行。
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狙いのを引き入れて俄然やる気に。
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そして絶好のを引き入れてリャンメン待ちリーチをかけ、
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追い付いていた村上からを捉え、2600は2900。
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局は進み、南1局1本場。多井が打点は安いながらも3局連続でアガリを決め、トップまであとわずかのところまで迫っている。ドラドラ含み、4トイツでチートイツも視野に入る手牌から、を引いて打
。
のトイツで守備力を確保しながら、アガリやすさを求めてタンヤオ方向にかじを切る。攻撃と守備のバランスを取った進行。
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その後、萩原の先制リーチがかかるが、多井も追い付く。現物を切って
のシャンポン待ちか、片スジの
を打っての
待ちか。
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多井の選択は、ドラ切りリーチ。ドラが3枚見えで
の景色が少し良さそうに見えたか。打点が狙えるときは強気に攻める。多井は守ってばかりの打ち手ではないのだ。
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直後に村上も追っかけリーチをかけて3軒リーチ対決になるが、ここは多井が萩原のを捉えて7700は8000。
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麻雀星人強し。
だが、このままやすやすとやられてばかりのMリーガーたちではなかった。
リーチ超人・村上淳の矜持
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南2局4本場。村上の手は赤赤で形もまとまっている。をポンして役をつければ、アガリまで近そうな形。
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そこへ多井から切られた。
は村上の目から4枚見え。これを仕掛けて
の後付け、あるいはタンヤオでアガリを狙う打ち手も多そうだ。
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村上は平然と見送り、牌山に手を伸ばした。自身は4番手で親番、チームのポイント状況を考えれば、2着すら受け入れがたい。トップを狙うために、ここは目先のアガリではなく、高打点を目指した。
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寿人から切られたもスルー。
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そして引き入れたで、三色赤赤での満貫・ハネ満もくっきりと見えるようになった。
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このを萩原がチー。
も鳴いており、ダブ
チャンタドラの満貫テンパイ。
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しばらく形が変わらなかった村上だが、を引いて1シャンテンが広くなった。
のポンテンもかけられるようになったことから
切り。
が3枚切れており、マンズの伸びは少々厳しい。
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そこに、選択を投げかけるような引き。
が通っており、マンズであれば
のスジの濃度は上がっている。
での放銃はドラが絡んで打点もありそうだが、それでも形で打っておかしくない。
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しかし、村上は打たない。のトイツ落としでいったん迂回。もちろん遠回りにはなるが、危ないと思った牌は、形や状況に甘えずしっかりと抑えこむ。点数がない状況の親番で、なお我慢ができる強靱な精神力。決して弱気ではなく、自身の読み、引いては自身の麻雀に自信があるからこその選択だったと思う。