「バランスのゲーム」を乗りこなせ!! 沢崎・小林・多井・黒沢、それぞれのバランス。【Mリーグ2021観戦記1/21】担当記者:渡邉浩史郎

この第一打を仕掛けたのが南家:小林。【南】後付けの形だ。

ここで切るのは【1ピン】。なるほど、どうせ一枚目の【南】から仕掛けないといけないような形。それならくっつき目一杯に取るよりも安全度も兼ねて三種の字牌でターツを作りに行ったほうが押し引きのバランスが取れるという判断だ。

【白】を重ねて、これである程度安全も確保できた。切るのはもちろん余った字牌……

ではなく、なんと打【7マン】

「躱し手は目一杯に受けろ」は一つの格言として確かに存在する。アガることに価値があるため、特に序盤の両面ターツなどは絶対に取りこぼしたくないところだからだ。

しかしこれが超鳴き:小林のバランス。受けが【4マン】と一部被っている【7マン】よりも、字牌を持っておくこと、字牌が重なった時のメリットを重く見る。まさに小林本人にしか計り知れない「バランスの一打」だ。

これを見事にアガり切り、沢崎の親番を軽く流す。完璧なゲームメイクで南場に突入した。

【南1局】

この半荘全く浮上のきっかけを見いだせない黒沢。

「難しい選択を迫られる場面が多い」とは解説:土田の言。それを象徴するような局面がこちらの手牌。

黒沢は打【7ピン】を選択。これももちろん一つの選択肢だ。

あまりにも非情な牌の織りなり。

解説:土田「【中】が切れていれば……」

そうだ。確かにこの手は選択の場面で【中】を切れていれば

【6マン】【7マン】【8マン】【1ピン】【2ピン】【3ピン】【赤5ピン】【5ピン】【6ピン】【7ピン】【8ピン】【6ソウ】【8ソウ】

の三色聴牌だ。

「何をばかなことを」と思う読者もおられると思うが、好調の時の黒沢のバランスであれば【中】を切れていたかもしれない。事実今までもそうした選択を、正解させる黒沢を我々は数多く見てきたはずだ。

「不可能に思われる手筋でも、黒沢なら可能にしてくれるのではないか」、それほどまでに黒沢は多くの期待を背負っているのだ。

結局この局は多井と沢崎の二人聴牌で流局。この局の海底ずらしについて、小林が語ってくれているので興味のある方はぜひともAbemaプレミアムに加入してご覧いただきたい。

【南2局】

この局、良い手をもらったのは沢崎。ドラドラ赤でタンヤオも見れる勝負手。

【3ソウ】ポンから発進。タンヤオ固定の打【2ピン】

次巡持ってきたのは【4ソウ】。カン【3ソウ】は自身でポンしているところ、当然打【2ソウ】かと思われたが……

何と沢崎は打【3ピン】!!

経験と論理から導かれたこの打牌。意図を紐解いていこう。

まず現状のこの手は仕掛けが厳しいというのが沢崎の認識。自身の河と仕掛けにソウズが安く、マンズとピンズが濃い状況。上家が多井ということもあり、生半可なところから牌が降りてくることはないだろう。

しかも打点と役、そしてポン材という関係上、ドラ【4マン】の部分と【8ピン】周りはほとんどこの形から動かすことはできない。事実上動かせるのは【3ピン】【5ピン】部分のみになる。

ダイレクトの【4ピン】逃しは確かに痛いが、それでも多井からフリテン【3ピン】を鳴ける公算が十分にあり、【6ピン】を引けば両面、【3ピン】縦引きよりはダイレクト【3ソウ】ツモや【2ソウ】縦引きのほうが勝ち目があるという意図なのだろう。

数理で考えたときこの打【3ピン】が選択肢として出てくることはほぼないだろう。まさに沢崎オリジナルバランスといっていい。

そしてこの選択が……

2軒リーチを搔い潜る、幻術のようなマンガン和了に化ける。

これで一気に小林を捲ってのトップとなる。

【南3局】

しかしこのままでは終わらないのがMリーグ。

多井が【中】をポンして打【4ソウ】。赤絶対2枚使うよ+少しでも【7ソウ】のチー率・出上り率上げるよの意思が見える。

これにからめ捕られたのが沢崎。

多井は5800のアガリで連荘に成功。

沢崎からすれば「多井の仕掛けに打点が絡む赤があるなら【4ソウ】先打ちの【4ソウ】【赤5ソウ】の線は外せない」+「そもそも【4ソウ】【7ソウ】が薄く、自身の手都合」+「目下のライバル、下家小林への危険牌先打ち」と考えての打【7ソウ】だったと思われるだけに、少々予想外の出費か。

【南4局】

小林のアガリでかなり僅差となって迎えたオーラス。

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