そして一粒の雪は溶けずに残った 村上淳、復活の宴【Mリーグ2021観戦記2/8】担当記者:ZERO

といった多井の意志だったのかもしれない。

東2局

「ツモォ! 400700!」

周りがビクッとするくらいの大きな声を会場に轟かせた村上。

なんてことない安手だが、村上はこのアガリが「今日はいけるかもしれない」と思えるほどに手応えがあったと語る。

遡ること3巡目

村上はここから【7ピン】を切った。

この時点で魚谷と多井から仕掛けが入っており、ドラのない村上はほぼオリだなと思って一応筋の【7ピン】を切ったという。

それがあれよあれよのうちにテンパイして、ツモアガリ。
実際に魚谷と多井にテンパイが入っていたので、見た目以上に価値のあるアガリだったのかもしれない。

東3局。

本当にあの400700が逆襲へのスイッチだったのか、村上にチャンス手が入る。

【4ピン】をポンしてタンヤオドラ2・赤のマンガンをテンパイ。【3マン】【6マン】待ちだ。

しかしMリーグは仕掛けてからが長い。

直後に

寿人からアガリ牌の【6マン】が打たれそうになる。

村上(対面)の捨て牌を見ても、まだテンパイしているようには見えない。

──しかし、寿人は

身をよじるように【2ピン】を切った。

【6マン】は危険というだけではなく、ドラが【7マン】なので自身の手の価値を高めるためにも必要との判断だろう。

Mリーグ2020 MVP(+494.1) 佐々木寿人

「麻雀攻めダルマ」の異名はシャミじゃないかというクレームが飛んできそうなほど鉄壁の守りを見せる。

 

ずっと切らずに粘っていた【6マン】だが、【6ピン】【9ピン】待ちでテンパイした。

村上の仕掛けだけではなく、多井からもリーチが入っている。

とはいえ、寿人は親だ。ここで勝負しなくて、何が攻めダルマだ!

寿人は静かに【北】を抜いた。

親だろうとなんだろうと、無理なものは無理。

行きたい気持ちを抑え、劣勢を受け入れたのだ。

いつもここからが遠いんだよな。

これまでも、何度も高打点の手はきてくれたのだけど、あと1牌が届かない。

寿人に抑え込まれ、多井に反撃され、村上は今季のデジャブーのような感覚になったのかもしれない。

しかし、やはりこの日は何かが違った。

自らの手でアガリ牌をたぐり寄せ、20004000の先制に成功したのだ。

東4局、勢いに乗った村上が溢れかえる中張牌を捉え

中押しを目指し、【1ソウ】【4ソウ】待ちのリーチと畳み掛ける。

親の多井の対応が面白い。まずはリーチを受ける直前

多井はここからなんと【5ピン】をツモ切った。

メリハリが効いてるとか、そういうレベルじゃない。

ドラの【南】を重ねるか678の三色になるか、いずれか高打点になったら攻めようという構えだが、それにしたって多井は親だ。

思い切ってドラを切るか、好形を目指して【1マン】を切るのが普通だろう。

少なくとも多井以外の31人のMリーガーはピンズの4連形には手をかけない。

さきほどの【赤5ピン】切りといい、ある意味勝ちたい気持ちの裏返しなのかもしれない。

残り20試合を切ったところでABEMASは+180.9pt。

ここで無理して300~400ptを狙うのはリスクばかりが大きい。現状維持でもいいので確実にレギュラーシーズンを突破する。

本気で優勝を目指しているからこそ、ここでは一旦頭を下げるのだ。

その多井、村上からリーチが入った一発目に

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