ただ、が園田に打てるか。片スジではあるが、決して安全とは言えない牌。そして直撃となってしまえばトップが一気に危うくなる。
ゆえに現物の切り。茅森は安全策を採った。ドリブンズに隙を見せない、シビアな選択。待ちになるが4枚見え、特に高目が3枚切れていたのも理由の一つだろう。
ラス引きは、全てが見えている側からすれば痛恨。
しかし、そこから茅森は粘った。にをくっつけてのカン待ちテンパイが復活したが、後スジとはいえ、は通っていない牌。より万全を期すなら園田のリーチ宣言牌を抜く選択もあったが、茅森はこのテンパイを取り、を押す。
満貫・ハネ満のアガリは確かに見ていて気持ちがいいし、今シーズンの茅森はそういうアガリを当たり前のように決めてきた。しかしこの日の茅森にとって、そしてチーム・ファンにとって何よりもうれしかったのが、窮地に追い込まれながらもしのぎ切った、ツモのみ300-500のアガリだったのではないだろうか。
最終局はドリブンズ・園田の着順アップを阻止したい滝沢から差し込み気味に打たれたで三色赤ドラをアガり、見事PVデーでトップを獲得した。これで、フェニックスと7位ドリブンズのポイント差は500ポイント越え。PVのコメント欄が茅森を祝福する温かい声にあふれるなか、近藤は安堵したかのように、こうつぶやいた。
「これでようやく、上を見て戦える」
PVでは、ファンがSNSなどよりも直接的に、選手たちに応援の声を送ることができる。ただ、実際に麻雀を打つ選手は、(今はコロナ禍でできないこともあるが)サッカーや野球のように声援や拍手を直接受けながら戦えるわけではない。では、選手たちにとって、ファンの応援はどのように届いているのだろうか。
近藤は、「ちょっと気弱になりそうなときでも、そういう人たちの声を思い描くとシャンとできる」と語る。応援の声が自分を立て直し、ベストの選択をするための支えになってくれるのだそうだ。
魚谷は、応援してくれる人より先に諦めないことを大事にしているという。「一人でも応援してくれる人がいる限りは、その人が応援したいと思ってくれる麻雀プロでいるのが義務だと思っている。応援してくれる人がいるから頑張れるというのは絶対にある」
これは、ニュアンスは違えど、全てのMリーガーが思っていることであるはずだ。応援の声は、間違いなく選手たちに伝わっている。そして選手の支えとなり、ときに心ない声を打ち消し、最高の闘牌を見せるための力の源となる。
だからこそ各チームのファンの方には、ぜひ愛するチームや選手に、より一層の応援の声を送ってあげてほしい。それがファンとチームのさらなる幸せな関係の構築、ひいては佳境を迎えたMリーグをさらに盛り上げていくことにつながるはずだ。
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。