全てはこの一瞬のため……
多井隆晴、”修羅”のラス回避
文・渡邉浩史郎【木曜臨時ライター】2022年3月24日
【第2試合】
東家:堀慎吾(KADOKAWAサクラナイツ)
南家:多井隆晴(渋谷ABEMAS)
西家:二階堂瑠美(EX風林火山)
北家:高宮まり(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
セミファイナル三日目、二戦目は……
堀のいきなりの6000オールで幕を開けた。
安定感のある堀にいきなりの大量得点。安定の打ち回しで少なくとも連対は外さないだろうと、誰もが思った矢先……
東1局2本場、高宮のマンガンツモ。
そして東3局、堀と高宮の先制リーチに押し切って、瑠美が堀から一発直撃で12000を召し取る。
これで三つ巴。つくづく麻雀は予測不可能な展開が起こるゲームだ。
この状況を耐え忍んでいた男が一人。
麻雀星人、多井だ。
ここまで手牌もツモもほとんど効かず、おまけにツモられ・勝負手での放銃と10000点近く点棒を削られている状況。
しかしこのままただラスで終わるわけないのが多井が多井たる所以。
多井の頭の中で綿密にくみ上げられるラス回避への方程式。その片鱗は東四局に姿を見せ始めた。
【東4局】
配牌でイーシャンテンをもらった多井。だが現状は打点が見えない。
次巡、引いたのは。
ここで多井は切りとした。
広さだけなら切りだが、そうするとこの打点が欲しい局面でドラ受けがなくなってしまい、ほとんどリーチのみの手組になってしまう。
瞬間の手牌だけ見れば三色を見てツモ切り。やを引いたら思い切っての落としもあるが、それよりも多井は後々の柔軟性・ヘッドのタンヤオ移行等での打点を見た形だ。
高宮・堀が続けざまに役牌をポンしたところでこの聴牌。
多井はこれを外した。やはりこの局のテーマは打点。ピンズのホンイツ模様の堀がいるとはいえ、一枚切れのシャンポンで曲げている場合ではないということだろう。
外し方にも注目だ。ここはタンヤオ変化を見ずに、一枚切れで親の現物の対子落とし。切りでは引きでのフリテン三面張の聴牌を取れないといった自分の手都合に加えて、自身の河をこれ以上弱く見せたくないというのもあっただろう。対子落としと対子落としの時とで他家が通せる牌は結構変わってくる。
多井の確かな選択が、高宮のこの仮テンへの放銃を防いだ形となった。
そうして見事狙い通り、高目ドラの両面聴牌を取ることに成功する。
親の高宮から安目を出アガリ。裏を乗っけてこの半荘初の収入は2600点となった。
そんな多井を尻目に南1局、堀が再び一発ツモでの親マンで一足先に抜け出し。
南2局、頼みの多井の親番も、高宮が軽やかに2000は2600を瑠美から出アガリ。
これでトップはかなり難しい。さぞや悲しげな顔をしているかと思いきや……
その時画面に映された多井の表情は、百戦錬磨の修羅の顔をしていた。
【南3局】
ここにきてようやく多井に勝負手らしい勝負手が入る。
しかしわずか三巡にして高宮・堀が面子手のイーシャンテン。このスピードを超えていけるかが課題だ。
多井もイーシャンテンとはいえ、こちらは七対子。二次的なものも含め、受け入れ枚数は雲泥の差だ。