絶対にトップを
仲間の元へ持ち帰る
信頼を力に変え
多井隆晴は可能性をつないだ
文・東川亮【月曜・木曜担当ライター】2022年4月25日
多井隆晴、ポストシーズンの苦悩。
昨シーズン、優勝を託されたファイナル最後の5連闘。
多井は、トップはおろか2着すら一度も取れず、敗北の屈辱にまみれた。
そして今シーズン、4年連続4度目の出場となった朝日新聞Mリーグ2021-22ファイナル。ここでも多井は2戦に出場し、4着、4着。決して多井の麻雀がファイナルで乱れたわけではないが、それでも、残酷な結果が続いた。
現在3位で残り4戦、落とせば優勝の可能性が限りなく小さくなる試合。それでもチームは多井を信頼し、卓へと送り出した。
「トップしか考えていない」
ここで勝たずして、最速最強は名乗れない。
第1試合
東家:堀慎吾(KADOKAWAサクラナイツ)
南家:多井隆晴(渋谷ABEMAS)
西家:佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
北家:魚谷侑未(セガサミーフェニックス)
多井隆晴の苦悩は続く
東2局1本場、多井にとって大事にしたい親番だったが、堀、寿人のリーチを受けてしまった。ただ、自身の手もドラが1枚、あるいはピンフや三色などもある、勝負したい形。
「おそらく先手は取られるが、いつもの僕なら簡単にオリているけど、今日は押し返す」
トップ取りのためには、どこかで踏み込まなければならない。ならば、ここも強く行くのか。粘るならば、あるいはか。
どれだけ押したい理由があっても、無理なものは無理なのだ。自身が無謀と思う押しで放銃してしまえば、おそらく多井は多井でなくなる。2回しかない親番の1回を放棄し、彼はチャンスを待った。
このとき、先制リーチの堀の待ちは、多井が一発でつかんだ。
追っかけリーチの寿人は、粘るなら押し出されてもおかしくない、待ちだった。ポストシーズンの多井を象徴するかのような展開の悪さ。しかし多井も、もちろん他のMリーガーたちも、不運を不運で片づけるだけの麻雀は打っていない。
堀慎吾、勝つために呼ばれた男の意地
堀と寿人のリーチ対決は、堀が制した。ツモって1000-2000は1100-2100。
魚谷の4000オールで差を詰められた東4局1本場、引いたを残し、3枚見えで景色のいい受けを固定。
次巡、残したを重ねてテンパイ、先制リーチ。
親の魚谷が強気の押しから同じ待ちリーチで追っかけてくるも、引き勝って2000-4000は2100-4100。後続を突き放す。
昨シーズン、KADOKAWAサクラナイツは準優勝だった。外野からすれば上々の成績に見えるが、優勝するためのポイントゲッターとして呼ばれた男は、「優勝できなかったなら負け、その結果がただただ悔しい」と、笑顔なく語った。勝って存在価値を示してきた男は、昨年の轍を踏むまいと、足のケガを押して出場しながら、したたかに勝利を積み重ねようとしていた。
南1局1本場は、多井が魚谷からリーチチートイツ、3200は3500を出アガリ。当面のライバル・フェニックスが3番手に後退する。堀にとっては理想的な展開である。
耐えに耐え、勝機をつかんだ最速最強
トップを取るなら、南2局の親番は東場のようには手放せない。多井は、2巡目に切られた場風の南から仕掛けた。とりあえず1シャンテン、連荘すれば、次局に大物手が入るかもしれない。
さらにをポン。打点は現状2900だが、普段は軽々に仕掛けない多井の2フーロだけに、周りはそれ以上の圧を感じていたと思われる。
堀はドラのを引き、あっさりとメンツを崩し、守備モードに入る。ここで親と戦う理由は全くない。
当初は安かった多井の手は、引きによってパワーアップ。も引き、満貫の気配も少しずつ帯びてきた。
堀からが鳴け、まずは単騎テンパイ。現状赤の5800だが、