立場も名声も関係ない
愛する麻雀を
心の底から楽しんだ
著名人たちの宴
【A卓B卓】担当記者:東川亮 2022年8月7日(日)
一般的に麻雀はゲームであり、余暇を過ごすためのものだ。大半の人にとっては、仕事終わり、たまの休み、気心知れた友人と会ったときに気楽に卓を囲み、牌の巡りに一喜一憂する、遊びの一つでしかない。今回「著名人最強決戦」に出場した8名にとっても、そうした側面はある、あるいはあったはず。
普段から麻雀に親しんでいるわけではなくとも、麻雀が人生の潤いであることに変わりはない。彼らも、麻雀を愛する我々の同士なのである。
「著名人最強決戦」はA卓・B卓ともに、麻雀へのひたむきな思いが熱い勝負を生んだ。
A卓:魂のぶつかり合いが生んだ、唯一無二のストーリー
A卓で登場するのは、俳優1名と漫画家3名。いずれも、心を震わせる「ストーリー」に関わってきた人たちである。麻雀で生まれるストーリーは、ときに人々の予想を大きく逸脱する。そのなかで彼らは、何を見せてくれるのだろうか。
東1局1本場:理外の一打
A卓は開局早々、片山の12000が森川に炸裂して幕を開けた。次局は本郷がわずか5巡で絶好のカン引きからの待ちリーチをかける(※手前で倒れているのはドラ)。この時点で満貫確定、マックス倍満まである弩級のリーチだ。しかも待ち牌は山に残り6枚。片山に続いて本郷も抜け出す、一方的な展開になるかと思われた。
このリーチに対し、現物や4枚になったを切りながら形を維持していた福本が、テンパイならばと通っていないをプッシュ。しかしリーチは宣言しない。待ちのはどちらも本郷の現物待ち、かなり狙い目ではある。
しかし次巡、
福本はを引くやいなや、ツモ切りリーチをかけた。現物を打って、3枚切れとはいえ、のリャンメン待ちという勝負になりそうなテンパイに受け変えられるのに、である。一般的な理屈では少々考えにくい一打。
福本伸行
彼は「アカギ」「マミヤ」に代表される、数々の緻密な心理戦・人間描写を高く評価されてきた漫画家である。つまり、どうすれば相手の逆を突けるのか、そして心を折れるのかを、常に考えてきたとも言える。
このが、
待ちを拒否したシャンポン待ちに刺されば、失点以上に相手は混乱するだろう。もしかすると、その後の麻雀にすら悪影響を及ぼすかもしれない。打点こそリーチの2600は2900だが、これが狂気の天才「アカギ」こと赤木しげるを生み出した男の、理外の麻雀なのだ。一発勝負の麻雀最強戦において重要なのは、正着よりも結果であり勝利。そのことを、人の生き死にすらかかるギャンブルを描き続けてきた福本は、十分に分かっている。
だが、相手とてただ者ではない。次局、本郷に先制リーチが入る。リーチピンフイーペーコー、ドラのを一発でツモれば6000オール。
本郷奏多
福本がアカギを生み出したなら、それを現実に再現したのが彼だ。元々原作の大ファンで、「アカギ」を読むために麻雀を覚えたのだという。ある意味、福本以上にアカギを身に宿しているのかもしれない。
本郷の親指が、「ざりっ・・・」という牌の感触をゆっくりと楽しむ。
前局打ち込んだでの6000オール。やられたらやり返す、こんなところもまさに「アカギ」である。
南2局:初代最強位の嗅覚
南2局、2巡目から片山が動いた。オタ風の東ポン。手の内はドラがトイツでチャンタかホンイツか、あるいは自風の後付けか、といったところだが、2巡目でこのを仕掛けられる打ち手がどれくらいいるだろうか。
片山まさゆき
「ノーマーク爆牌党」「打姫オバカミーコ」など、理論と面白さを兼ね備える数々の麻雀漫画を世に送り出してきたレジェンド。初代最強位でもあり、今なお数多く麻雀を打ち込んでいる。
ポンからと立て続けに引いて待ちテンパイ。これは最高にうまくいった結果だが、門前にこだわっていれば、柔軟に対応していく余地は生まれなかった。この鳴き一つに、片山の麻雀の鋭さが伺える。
その後、待ちをに切り替えると、福本のリーチに対して真っ向から立ち向かい、
終了間際に福本から出たを打ち取って8000。これで一気にトップ目に浮上した。
こんな麻雀を打てる片山に、麻雀ファンの一人として、無礼を承知でメッセージを贈りたい。
「片チン、早く新作漫画描け!」
南4局:成るか、一撃必殺逆転KO
見せ場を作る3者と対照的に、森川は苦戦が続いていた。もちろん、東1局で片山に12000を打ち込んだのは間違いなく痛い。
その後、東3局では役満・九蓮宝燈1シャンテンまで来るも、打ち出したで本郷に放銃。
東4局には役満・国士無双1シャンテンまで手が進むも、残る2種はいずれも森川を避けていった。
南4局、森川は「片山か本郷からの倍満直撃、もしくは三倍満ツモ」という、極めて厳しい逆境に追い込まれた。