「超繊細なる巨砲」松ヶ瀬隆弥 その繊細さと勝負強さが生んだ 乾坤一擲の一打【Mリーグ2022-23観戦記10/21】担当記者:後藤哲冶

普段盤石な形でのリーチが目立つ多井だからこそ、このリーチには行きにくい……

とは簡単にならないのが、今日のメンバー。
ドラドラ赤でタンヤオがくっきりと見える近藤が、多井に通っていない【4ソウ】をピシッと押した。

一見表情は変わらない多井だが、カン【4ソウ】に待ちを取れた分、嫌な汗が背中を伝ったかもしれない。
それだけ、近藤の押しというものには迫力がある。

終盤に、近藤が追い付いた。
タンヤオイーペーコー、ドラドラ赤。ダマでもツモれば跳満というこの勝負手。

近藤の選択は、【4マン】切りダマだった。
【4マン】が自身から4枚見えていて、使いにくくなっている【5マン】を待ちにする選択肢もあったとは思うが、そもそも【8マン】が多井に通っていないこと、アガリ牌【7マン】がリーチ者多井と自分のスジの牌になり、他2人からも放銃が少しだけ期待できること。以上の理由から近藤はこの勝負手を【7マン】待ちに構えた。

しかしこの【7マン】が内川、松ヶ瀬から放たれることはなく、ジリジリと残り山が減っていく。
このまま流局か。そんな雰囲気が固まりつつあったその瞬間。

海の底に、近藤のアガリ牌【7マン】が眠っていた!
跳満のツモアガリで、近藤が一気にトップ目に躍り出る。

東4局

6巡目、松ヶ瀬の手が止まる。
自身の手は重いが遠くにホンイツチートイツなどが見える。
ホンイツにいらない、マンズを払っていくかと思われたが。

【6ソウ】ホンイツに向かうなら、必要そうな牌だが……
少し、松ヶ瀬視点を覗いてみよう。

親の近藤が【1ソウ】を対子落とし。その2枚目を内川がポン。
そして近藤が、手から【2ソウ】【4ソウ】のターツを落としてきた。

近藤の初打は南で、ホンイツに行こうとしている風にはあまり見えない。
そして手から少なくとも2つのターツを落としていることになり、手形が整っていてもおかしくはない。

先ほどの3000-6000で現状トップ目は近藤。
ここで親の満貫、4000オール以上をツモられると、近藤の持ち点が50000点近くなり、まだ東場とはいえトップが苦しくなる。

自分の手牌は、役牌こそ2種あるがメンツは無く、まだ重い。
そして何より自分の欲しいソーズは、下家の内川と被ってしまっているのも気がかりだ。

だからこそ、松ヶ瀬は【6ソウ】を打った。
ここで内川と自分でソーズを集め合って手が進まず苦しんで、喜ぶのは親の近藤だ。
内川の手からまだソーズはおろか、字牌すら余っていない。まだテンパイには遠そうに見える。

だから、進んでもらおうという打牌。

更に次巡、打【中】
実際にこれは、内川が欲しい牌だった。

結果的にこの局はタンヤオの仕掛けをした多井が1000-2000のツモアガリ。
これも松ヶ瀬にとっては悪くない。他家も使った巧みな打牌が、トップ目近藤の親を蹴ることに繋がった。

この松ヶ瀬のほぼアシストにも見える打牌の意図の根幹にあるのはただ一つ。
「トップを獲る」という強い意志だ。

ラスを引きたくないだけなら、ラス目の内川にアシストする意味は一切ない。
松ヶ瀬が求めたのはあくまでトップ。

この局は、松ヶ瀬のトップに対する執着が見えた1局でもあった。

南1局

4巡目。
ドラが【中】でこの牌姿から松ヶ瀬の選択は。

【中】切り。
中ぶくれの形になる【6ピン】は、好形を作るのに長けている。
対子の【南】は南場の南家に座る松ヶ瀬にとってはいわゆるダブ【南】の牌。
消去法で、松ヶ瀬はドラの【中】を手放した。

そして次巡。

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