アガリの花よ、咲き誇れ 黒沢咲の『セレブ麻雀』が、サンダーロードを明るく照らす【Mリーグ2022-23観戦記10/6】担当記者:東川亮

黒沢は、東場をアガリも放銃もなく終えた。そして迎えた南1局は、4巡目にして1シャンテンの手牌となる。なお直前に瑠美が切った【發】は当然のスルー。長年Mリーグを見てきているファンにとっては、ごくごく見慣れた光景。

【南】も重なり、どちらを仕掛けても役がある1シャンテン、我々庶民は喜んで鳴いてテンパイを取るところ。しかし黒沢は【9ソウ】を引いたところで、鳴きはすれどここからホンイツにわたる構想を描いていたという。ここで切った【6マン】も、三色の種でドラ受けにもなる、高打点のキー牌として残していたもの。打点を追った手組みはさすがだ。

だが、その後はなかなか手が進まず、そうこうしているうちに親の村上がリーチ、そこに対して高宮も鳴いて無スジ【3マン】をプッシュと、場が一気に沸騰する。黒沢も、無スジ【2ソウ】を引いていったんはトーンダウン。

村上から【南】が切られる。鳴けばテンパイするものの、1000点のテンパイで親リーチに無スジ【2ソウ】を勝負するには見合わないのでスルー。

だが、門前テンパイなら話は別だ。最後の【南】を引き入れると、少考の末、意を決したかのようにリーチをかけた。待ちは村上の現物【4ピン】【7ピン】だが、そんなことはお構いなし。

村上が両手を頬に当て、天を仰いだ。なぜなら村上のリーチはフリテンで、出アガリができないからだ。ただでさえ怖い黒沢のリーチが、親リーチのおっかけで飛んできた。中途半端な手であるわけがない。これは嫌すぎる、超怖い。

村上が恐る恐る通っていない【5ソウ】を河に並べた後、高宮が【4ピン】をつかんだ。村上には中スジで通りそう、黒沢も【1ピン】を切っていて片スジ。そしてここを押し切れれば、かなりトップへと近づくことができる。

この試合がシーズン初戦となった高宮は、序盤の手組みを慎重かつ丁寧に進めつつ、戦うべき局面でしっかりと戦う豪胆さは健在だった。だからこの【4ピン】切りは放銃になったとはいえ、高宮の良さが出たシーンだったと言えるかもしれない。

リーチ一発【南】、そこにトッピングされた裏裏は、麻雀の神様が黒沢に贈ったバースデープレゼントか。高宮からすればたまったものではないが。

その後はセレブクッキングのお時間へ。素材の味を生かしてリーチで仕上げ、南2局ではリーチツモピンフドラ裏の満貫ツモ。

次局もわずか5巡でピンフ赤ドラのリーチで、瑠美から満貫を出アガリ。

3局連続で満貫の花を咲かせた黒沢が、自身の、そしてTEAM雷電の今シーズン初勝利を挙げた。門前で高打点のアガリを決める「セレブ麻雀」の持ち味が発揮された、黒沢らしい一戦だった。

「みんながみんな、どんな結果でも最後まで楽しく打てれば、きっと応援してくれる皆さんにもその気持ちが伝わって盛り上がると思う」
昨シーズン、雷電のメンバー、そしてユニバースは、とても辛い思いをしていたはずだ。それを受けての今シーズン、選手たちにかかる重圧も大きいが、それでも麻雀を楽しむことで、きっと道は開けるのだと思う。そう、黒沢咲のように。

5シーズン目のMリーグ、TEAM雷電が歩む「サンダーロード」。
この道を行けば、どうなるものか。
迷わず行けよ、行けばわかるさ。

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