地獄から天国 渋川難波、勝利をつかんだ決意の愚形リーチ【Mリーグ2022-23観戦記11/7】担当記者:東川亮

空振り続けたリーチを、渋川はここでもかけた。それはもちろん、

勝利を、

つかみ取りに行くためだ!

呪縛を振り払うかのような一発ツモ、ドラ3裏1での3000-6000は、この日の通算29局目での、初アガリだった。

戦え渋川、勝利のために、仲間やファンのために

渋川の前に立ちはだかったのは、仲林圭。渋川と同じ日本プロ麻雀協会に所属する、長年のライバル。

東4局、仲林が丸山とのリーチ対決を制し、12000を出アガリ。丸山のリーチ棒も加え、渋川を300点かわしてトップに立った。

だが、渋川の牌勢も衰えてはいない。南2局、赤2枚の手を門前でまとめあげ、【3ピン】【6ピン】【9ピン】待ちのリーチをかける。

ツモればかなり勝利に近づける。ツモる渋川は、目に見えぬ何かに祈りを捧げているようにも見えた。

アガれたのは、祈ったからではない。アガリ牌がそこにあったから。そして、アガれる手を作ったから。
【9ピン】ツモでタンヤオはつかなかったが、打点は裏ドラでフォロー。リーチツモピンフ赤赤裏1、6翻でハネ満、3000-6000。ついに幸運も、渋川に味方し始める。

南3局
ここをクリアできれば、渋川のMリーグ初トップはほぼ決まりだ。しかし、そうはさせじと親番・仲林が【發】ポンから動く。ドラドラ赤で打点も十分、この手が決まれば一気にトップも狙える。

スムーズにテンパイ、カン【4マン】待ち。

直後、渋川も追いついた。ただ、ペン【7ピン】待ちは役なし。【9マン】を引けばドラこそ出ていくが三色で役ありになるし、【4ピン】にくっつけての好形変化も狙えなくはない。

だが、渋川は即リーチと打って出た。すでに局は中盤、【發】を鳴いた仲林は【8ソウ】【9ソウ】とターツを払い、【6ピン】まで切っていて、かなり手は進んでいそう。そこで打たれる【7ピン】を捉えられないのは、自身の隙となる。渋川は、自らが戦う道を選んだ。

仲林も【3マン】引きで選択。【6マン】を打てれば待ちが現状のカン【4マン】から【4マン】【7マン】へと変わる。だが、【6マン】は2スジにかかる上にドラ、打てば自身の打点が半減するだけでなく、放銃時の被害も大きくなる。

それらを理解してなお、仲林はドラを切った。たとえドラで満貫、ハネ満を放銃したとしてもまだ2番手、ならばとより連荘率を高める選択をした。実際、【4マン】は丸山が暗刻にしていて残り1枚、【4マン】【7マン】になると、【7マン】が2枚増えることになる。

渋川と仲林、同じ団体から同じときにMリーグ入りを決め、先日まで自団体の頂点を目指して競い合っていた二人。初トップは仲林が先だった。これ以上、渋川は負けるわけにはいかない。

何よりも、信頼して快く戦いへと送り出してくれた仲間、そして応援してくれるファンのために。

やってやれ、渋!

渋ぅぅぅぅぅ―!!

リーチツモドラ裏、2000-4000は仲林の倍満ツモ条件を消す、文字通りの決定打となった。



時間はとっくに24時を過ぎている。さあ渋、こうなったら10本場と言わず、朝まで親番やろうぜ。

ダメでした。

自身8戦目での念願の初トップ。大きな勝因となった愚形リーチ2発について「応援してくださる皆様がツモらせてくれた」と振り返った。

勝利のポーズは、まだまだぎこちなかった。でも、きっとこれからなじんで来るはずだ。

地獄と天国を見た1日。
おめでとう、渋川難波

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