困難の中でも最善を 村上淳、苦渋の選択で示した矜持【Mリーグ2022-23観戦記11/21】担当記者:東川亮

だが、村上はそうしなかった。放銃すれば、ラスはほぼ確定。さらに、この手から放銃せずにアガれる可能性が、果たしてどれだけあるのか。村上は現実から目を背け、夢を見ることはしなかった。

村上の表情に、葛藤がにじむ。彼が選んだのは、辛く苦しい道だ。真っすぐ手を進めて、残念ながら放銃してしまったとしても、諦めはつくだろう。けれどもそれは、自分を信じる仲間やファンを裏切る行為である。

2度目の親番は、身を切られるような痛みと共に流れていった。その痛みを受け入れて、村上はつないだ可能性を見る。

南4局、村上にこの試合で初めての先制テンパイが入った。ただ、【5マン】【8マン】が入れば高目三色、うまくハネ満ツモにでもなれば、白鳥を逆転しての2位フィニッシュも見えた。しかし、入ったのは三色が消える【2マン】。このままリーチをしても、一発か裏ドラが、あるいは赤牌などが絡まなければ、3番手の優すら逆転できない。ある意味、皮肉なテンパイと言えよう。

南3局、あれほど苦しい選択をして目指したのは、こんなテンパイなのか。

・・・そうじゃない。

村上は【西】を切った。テンパイを取らず、タンヤオでの打点アップを目指す。
結果を運に委ねるのではなく、自らの手でつかみに行く。それは村上の、ドリブンズの一員としての、矜持を示した一打だった。

たとえ、結果にはつながらなかったとしても。

アガリも放銃もなく、ラスを押しつけられた一戦。結果が欲しい村上に、Mリーグの舞台はまたも困難と苦痛を用意していた。悔しくないはずがない。

しかし、それでも村上は前を向く。最善を尽くした先に、求める結果があると信じて。

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