どこかで1つアガリにまで結び付けたいが、ギリギリの所で至らない。
そして迎えた南2局。
ここでも瀬戸熊が積極的に仕掛ける。
とポンしてこの牌姿。
初打に切っているが憎らしい。ホンイツが絶妙にぼけている。
この仕掛けに苦しくなったのは前原。
このとソーズをもう1枚勝負はあまりにも厳しい。
しかしこれを打ちぬくのが前原雄大。
一気に卓上に熱風が吹き荒れる。
も力強くプッシュ。
前原の手に力が籠る。彼もまた知っている。この短期決戦においての勝負所。
を引き入れてテンパイ……!
ここまで押し切った。ならばもちろん
リーチ!
地獄の門番が、卓上を業火で焼き尽くさんとその腕を振り上げた。
これに困ったのは岡崎だ。
ピンズは通っておらず、字牌は瀬戸熊に危ない。
光る前原の初打。岡崎が導かれてしまう――
一発放銃へと。
小さく「はい」と呟いた岡崎。
あの河では当たりそうに見えない。とはいえ、前巡に切ったを残すことはできなかったか。
岡崎の背筋に冷たいモノが伝う。
瀬戸熊と前原のプレッシャーに、岡崎が押されている。
続く南3局。
その嫌な雰囲気を振り払うように、岡崎が先制リーチ。
を暗槓してのカンリーチだ。
巡目が早いにつきテンパイ外しもあったかもしれないが、ここは即リーチを決行。
親番の瀬戸熊が中を対子落としして回った後、を引き入れてこの牌姿。
ここでオリてのオーラス勝負も無くはないが、瀬戸熊は知っている。
この勝負手が、もう一度来てくれる保証はないと。
絶好の引き。
これでダマでも12000になった。この南3局での12000はもちろん決定打になり得る。
静かに瀬戸熊がを河に置いた。
後がない内田も追い付いた。
待ち。迷いなくリーチへ踏み切る。これをツモってオーラスに望みを繋げられるか。
そしてその内田のリーチ一発目に瀬戸熊がつかんだ牌は……。
あまりにも危険すぎる牌。
瀬戸熊の手が止まる。
もちろん勝負手なのは分かっている。
しかしここで内田に満貫を打ったらそれこそ連覇の夢は絶たれる。
オリたらまだわからない。
オーラスに勝負を持ち越すことだってできるかもしれない。
もっと言うのなら、岡崎から内田への横移動なら、そのまま瀬戸熊が通過する未来だって――
強く乾いた音が響いた。