笑顔に秘めた気持ち
母の全力応援と
奏子の全力疾走
【D卓】担当記者:TYAS 2022年12月10日(土)
最強戦ファイナル1stステージD卓はMリーグ4名の対決となった。
丸山奏子は一度、この席に座るまでに小四喜で岡田紗佳を倒している。
その岡田は、国士13面張リーチでファイナル出場をもぎ取った。
そして、競技麻雀に一日の長がある黒沢咲と、
新Mリーガーで脂の乗っている渋川難波の対局である。
東1局、岡田のドラポンと丸山のリーチ対決で幕を開けた。
親番の渋川、イーシャンテンでの選択。対面の岡田が、少考してを切った場面である。
以外に共通安牌は無いが、親番とはいえ手牌の価値がそこまで高くなく、オリたくなる場面である。
「次はどのプロがMリーガーになるだろうか」と麻雀好きの間で話題になった時、今年のドラフト前に真っ先に名前が挙がったのは渋川難波であった。
Mリーグ公式解説者として人気があり、理に裏打ちされた正確な打牌も申し分がない。
ただ、渋川の本当に凄いところは、どんな状況でも信じた“理”に自分を預けられる胆力だと考える。穏やかな物腰の内側に秘めた、一本の芯と言い換えても良い。
少考の後に渋川は、誰にも通っていないを打ち抜いた。
ドラ無しイーシャンテンで、なかなか選択肢に挙がらないのではないだろうか。しかしどのみち勝負するのであれば、後々ドラポンに対して打ちづらくなるから勝負するという構えである。直後にを引き入れてリーチを宣言。
ドラポンの岡田から一発で討ち取り、貴重な4800点のアガリをもぎ取ったのである。
東1局1本場。ビハインドスタートの岡田が退き気味に構えていたところ、8巡目に何を切る。丸山にの仕掛けが入っている。
Mリーグ2021年レギュラーシーズンでは、16試合に出場し僅か1トップと苦しんだ岡田。個人成績以上に、批判の声の大きさに耐えられなくなるときもあった。勝負は水物であるが、爆発的に増えた視聴者の中には、心無い言葉を選手に浴びせる人がいるのである。
岡田はこの手から、未練なくを離した。現状はドラも無いチートイツのみのリャンシャンテンであり、退く手はきちんと退くと決めた、岡田の意志の表れである。
チートイツで粘ることをしないなんて…などとまた声を荒げる人もいるかもしれない。しかし恐ろしいことに、実はこの裏側で渋川がカン待ちの12000テンパイを果たしていたのだ。
直後にを引く岡田。前巡少しでも手牌に未練を残していれば、は止まらなかったかもしれない。
岡田は躊躇なく2枚目のを切り、やがて入った黒沢からのリーチにも対応して放銃することなく乗り切ったのである。岡田のMリーガーとしての実力の高さを窺える1局であった。
ちなみに渋川は全ての危険牌をプッシュした後に、アタリ牌のだけは止めており、こちらも流石の一言である。
東2局、丸山のホンイツ仕掛けに対して迂回した渋川が、黒沢から3900のアガリ。
渋川の打ち回しは見事だが、黒沢も渋川と同じく迂回してテンパイから放銃しており、致し方ないところ。
東3局、丸山の3000・6000が飛び出す。
他家の手が遅かったこともあるが、丸山のピンフ作りにおける丁寧な手順が、与えられた好機を逃さない。
東4局は丸山とのリーチ合戦を制した渋川が1000・2000のツモ。
東場を終えて、岡田と黒沢にアガリがない状態である。特にMリーグではセレブ麻雀と呼ばれている黒沢に、セレブな配牌が一つもない。
黒沢は、麻雀最強戦2022ミスター麻雀カップで、唯一の女性選手として出場、見事に優勝を果たしてこの席に座っている。また、今年の11月7日にはMリーグ過去最高得点である112,700点を叩き出したことは記憶に新しい。(ちなみにその時同卓していたのが、渋川難波である)
発足してまだ5年目のMリーグであるが、黒沢には昔からのファンが多い。それは黒沢がファンを大事にするということもあるが、他の選手にはない豪快な配牌、ツモ、そして徹底的に鳴かない麻雀が、心の柔らかい部分を鷲掴みにするのである。
南1局1本場、ついに黒沢のファンが待ち望んだ配牌が入った。三元牌の対子が3組ある。