最後の1牌に刻まれているのは偉業の2文字なのか 瑞原明奈、2年連続MVPへ孤独の大航海【Mリーグ2022-23観戦記3/20】担当記者:徳岡明信

さぁここで黙っていないのは本田。

伊達が2着目に上がってきたことで、冒頭に記載した魚谷を2着に置いたまま伊達と瑞原を3着4着にする条件が厳しくなってきた。
ならば、伊達が2着のままであれば順位点に相当する20000点分多く素点差をつけなければいけない。

タンヤオピンフ赤、高めイーペーコーの勝負手ともなればドラの9mを勝負してリーチだ。

伊達が親番なので少しでも親被りさせておきたい。

安目ながらも1発で跳満だ!
3000/6000の大きなツモアガリで伊達に大きな親被りをさせる事に成功。

この後の魚谷が親番で連荘してくれる事を祈る、もしくは伊達とのトップ2着なら36000点差が必要なので、さらに加点を目指していくか。

本田には逆転の糸口が複数残っている。

しかし伊達だって本田の思い通りにはさせまいと必死の抵抗だ。
南3局、魚谷の親番を1000点で蹴って、局消化に成功する。

オーラスを前にMVP争いの条件を整理しておこう。
・瑞原は跳満以上のアガリで伊達を交わしてトータル1位だ。
・伊達はこのまま終了すればOKだ。
・本田は現状の着順のままだと伊達をまくれていないので
あと14300点以上の加点が必要である。

運命の南4局

「リーチ」

ツモ+裏ドラ1枚、もしくは出アガリ+裏ドラ2枚の条件に賭けて
瑞原が栄光を掴みに海原へと旅立つ。

伊達はいたって冷静に
表情を崩さず手を崩す。

(やめてー! ツモらないで!)
内心はそう思っているであろう、しかし一切の感情を殺して必死にオリに回る姿は伊達らしくとても美しい。

本田も必死にテンパイを目指すも、麻雀の神様はここで本田を見捨ててしまった。
最後の最後にノーテンにてMVP戦線から離脱するのは辛すぎる。
しかし今シーズンの本田は驚くほど飛躍した。
昨シーズンの本田とはまるで別人のようであった。
自信と強気で満ち溢れた闘牌は雷電ユニバースだけでは無く、日本中の麻雀ファンを魅了してくれた。

この悔しさをバネに来年もこの高みで争っている事であろう。

終盤に魚谷にテンパイが入る。
瑞原のアガリ牌の【6ピン】を切ればテンパイ。
ノーテン終了だとテンパイ料で瑞原にまくられてしまう。

頬に手を当てて考える魚谷。

レギュラーシーズン敗退が確定的なこの状況でテンパイを取って、MVP争いを決めてしまうかもしれない行為を行っても良いものか。
我々が想像する以上に彼女にはこの時に葛藤があったに違いない。

そして魚谷は【6ピン】を真っすぐ打ち抜いた。
己の信念を貫き通した。
必死の覚悟で3着を守りにいったのだ。
それが今できる最高の打牌であり、応援してくれるファンやチームメイトへの報いならば誰も魚谷の打牌を責める事など出来ない、むしろこの覚悟を称賛するべきである。
何千人何万人の想いがこもった一打に震えが走った。

その【6ピン】を見つめるだけの瑞原。
残りツモ番は2回。裏裏条件に賭ける手も大いにある。
それでも瑞原はツモに賭けた。

チームのポイントなんて話は一旦忘れよう。

そこにあるのはMVPの栄光を掴める可能性を
ツモに賭けるのか、はたまたロン宣言をして裏裏に賭けるのか。ただそれだけの話。
可能性が高いのは前者の方だと瑞原が思った。じゃあそれが正解じゃないか。

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