このあとで、
場に放たれたを仕掛けた岡田、
亜樹のをとらえた!
綱渡りのように細い道をたどった岡田が、親番をギリギリ繋いだ見事な一局であった。
しかし、続く2本場は亜樹のアガリで、岡田は3着目でオーラスを迎えることとなる。
その南4局、
岡田に悩ましいテンパイが入る。
ツモ。
伊達との差は11000。ピンフがついていたら、ツモ裏1条件でのトップ狙いリーチもあった。
しかし、このテンパイではリーチツモ赤赤なので、偶然役が2つ必要だ。
厳しい条件だ。だが、可能性がないわけではない。
岡田が出した答えは、
打ダマだった。
主な狙いは、
「リーチ」
他家から出るリーチ棒だ!
これで、
岡田はリーチに踏み切れる! 1000点が上乗せされるので、ツモれば伊達との同点トップだ!
白鳥としても、ファイナルを考えるとサクラナイツの着順を押し上げる方がいい。
二人の考えがピタリとハマった瞬間だった。
だが、まだ条件が出来たに過ぎない。岡田はツモらないとトップになることが出来ない。
「お願い、ツモって…」
想いに反して、なかなかアガリ牌を引き寄せることが出来ない岡田。
1枚、また1枚と散っていく花びらのように、岡田のツモが少なくなっていく。
そして、
最後の1枚となった。
愛おしむように感触を確かめて、持ってきたその牌は、
であった。
伊達と岡田の劇的な同点トップとなり、会場は、
赤く染まったのちに、
薄桃色へと変わっていった。
まず、
大仕事をやってのけて、格闘倶楽部のファイナル行きを決めた伊達。レギュラーシーズンのMVPは、このあとのファイナルでもキーパーソンになるような予感がする。活躍に期待したい。
そして、
このあと1試合を残していたサクラナイツだったが、奇跡は起こらず、今季はセミファイナルで敗退となった。
兼好法師が書いた『徒然草』の一節に、こんな表現がある。
「花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは。」
桜も月も、一番美しいときだけが情緒を揺さぶるのではない。他にも趣深い瞬間というのは多いものだ、というのが意だ。
今年度のサクラナイツはずっと苦しかった。咲き誇ることがなかった、と言っていいだろう。
だが、そんな中でも、各選手は美しかった。
不調にあえいだ堀は、それでもチームをファイナルへ導こうと必死に手を伸ばした。