例
日本プロ麻雀協会・逢川恵夢。
「がおー系雀士」「清純派乙女系雀士」と、ネタ枠に捉えられがちだが、実力は折り紙付きで、女流雀王3回を含む数々のタイトルを獲得している。
次の瞬間、女流雀王の実力を垣間見ることができた。
「チー」
このをチー。
いわゆる食い延ばしというやつだ。
メンゼンを放棄してしまうし、自身のツモ番をパスしてしまう。
スルーする打ち手も多いはず。
このチーはというネックをリャンメン()にするだけではない。
でアガればイッツーも付加されるし、食い延ばしは盲点になりやすい。
(とターツ落とししてきた人に食い延ばしがないと読むのが普通)
こうして狙い通り高目12000となるテンパイを組むことに成功した逢川。
準決勝の終盤以降、見せ場を作ることができなかったが、見るものにその存在感は強く残ったに違いない。
ただ、この局アガったのは志岐だった。
は仕掛けた親・逢川の現物なれど、強気のリーチを選択して3000/6000のツモアガリ。失った点棒を回復することに成功した。
背水の一井
東4局。
追う立場の一井の手が止まる。
二巡目のピンフのみテンパイ。待ちは
。
何も考えずリーチを打つ場面だが、この手牌、手変わりが豊富にある。
をツモっての高目123三色。
をツモっての高目234三色。
ドラの振り替わり。やの振り替わり。
さらにどちらをツモっても高目三色のフリテンリーチを打つことができる。
さらにさらに、これらの変化を待ちながら数巡後にツモ切りリーチを打てばのような端牌は狙い目になる。(端牌待ちなら即リーチするでしょ、という読みが働く)
2巡目だけに、これらのあらゆる打点向上を狙ってダマにする手はある。
私はこのダマテンのことを「アルティメットピンフのみダマ」として戦術書に書いたことがあった。
日本プロ麻雀連盟・一井慎也(ひとついしんや)。
服のせいで、せっかく私が長々と麻雀の話をしたのに、頭に入ってこなくなった人も多いのではないか。
連日、カラフルなパーカーを着ての登場だが、これってめちゃくちゃ勇気がいる。
負けると悪目立ちするからだ。
「プロとしてうんちゃらかんちゃら」と叩かれるのが目に見えている。
調べたところプロ入り23年目、筆者と誕生日が3日違いの今年46歳ということがわかった。
この派手な格好は、卓外でもIKUSAを盛り上げるためだとは思うが「こんな格好をして下手な麻雀で負けることだけは許されない」と自分を追い込んだ、背水の陣なのではないか。
タメと知って、急に親近感が湧いてくる。
「2000/4000」
慎ちゃんがツモった。
御無礼、親近感が湧き散らかしました。
普段、リーグ戦では一発裏ドラのない連盟ルールを打っているだけに、ダマテンに構えると思っていた。リーチ・一発・ツモ・ピンフ・裏1。なんという効率の良い偶然役の活用。
私なら顔を真っ赤にしながらを切ってフリテンリーチを打っているところだ。
南2局2本場。
アガってトップに躍り出た一井に、またしても早いテンパイが入る。
ダブを暗刻にしての待ち。
これまた通常なら迷わずにリーチを打つ手牌だが、親番が連荘中の志岐なのだ。
志岐にトップを取られたらほぼ終わり、という条件なら、この親を落とすためのダマテンに心が揺れてもおかしくはない。
リーチすることによってアガリ確率が下がることは間違いないのだ。