【EX風林火山 IKUSA 決勝2日目 観戦記】持っているものは誰だ! 想いと技が交錯する IKUSA最終章 文・ZERO / 沖中祐也


【1マン】【1マン】【2マン】【1ピン】【2ピン】【1ソウ】【2ソウ】【3ソウ】【5ソウ】【6ソウ】【7ソウ】【東】【東】

日本プロ麻雀協会・逢川恵夢
「がおー系雀士」「清純派乙女系雀士」と、ネタ枠に捉えられがちだが、実力は折り紙付きで、女流雀王3回を含む数々のタイトルを獲得している。

次の瞬間、女流雀王の実力を垣間見ることができた。

「チー」

この【4ソウ】をチー。
いわゆる食い延ばしというやつだ。

メンゼンを放棄してしまうし、自身のツモ番をパスしてしまう。
スルーする打ち手も多いはず。

このチーは【1ピン】【2ピン】というネックをリャンメン(【7ソウ】【8ソウ】)にするだけではない。
【9ソウ】でアガればイッツーも付加されるし、食い延ばしは盲点になりやすい。
【1ピン】【2ピン】とターツ落とししてきた人に食い延ばしがないと読むのが普通)

こうして狙い通り高目12000となるテンパイを組むことに成功した逢川。
準決勝の終盤以降、見せ場を作ることができなかったが、見るものにその存在感は強く残ったに違いない。

ただ、この局アガったのは志岐だった。

【4ピン】【7ピン】は仕掛けた親・逢川の現物なれど、強気のリーチを選択して3000/6000のツモアガリ。失った点棒を回復することに成功した。

背水の一井

東4局
追う立場の一井の手が止まる。

二巡目のピンフのみテンパイ。待ちは【1ソウ】【4ソウ】

何も考えずリーチを打つ場面だが、この手牌、手変わりが豊富にある。

【1ピン】をツモっての高目123三色。
【4マン】をツモっての高目234三色。
ドラ【9ソウ】の振り替わり。【赤5ソウ】【赤5ピン】の振り替わり。

さらに【1ソウ】【4ソウ】どちらをツモっても高目三色のフリテンリーチを打つことができる。
さらにさらに、これらの変化を待ちながら数巡後にツモ切りリーチを打てば【1ソウ】のような端牌は狙い目になる。(端牌待ちなら即リーチするでしょ、という読みが働く)

2巡目だけに、これらのあらゆる打点向上を狙ってダマにする手はある。
私はこのダマテンのことを「アルティメットピンフのみダマ」として戦術書に書いたことがあった。

日本プロ麻雀連盟・一井慎也(ひとついしんや)。
服のせいで、せっかく私が長々と麻雀の話をしたのに、頭に入ってこなくなった人も多いのではないか。

 

連日、カラフルなパーカーを着ての登場だが、これってめちゃくちゃ勇気がいる。
負けると悪目立ちするからだ。
「プロとしてうんちゃらかんちゃら」と叩かれるのが目に見えている。

調べたところプロ入り23年目、筆者と誕生日が3日違いの今年46歳ということがわかった。

この派手な格好は、卓外でもIKUSAを盛り上げるためだとは思うが「こんな格好をして下手な麻雀で負けることだけは許されない」と自分を追い込んだ、背水の陣なのではないか。

タメと知って、急に親近感が湧いてくる。

「2000/4000」
慎ちゃんがツモった。
御無礼、親近感が湧き散らかしました。

普段、リーグ戦では一発裏ドラのない連盟ルールを打っているだけに、ダマテンに構えると思っていた。リーチ・一発・ツモ・ピンフ・裏1。なんという効率の良い偶然役の活用。

私なら顔を真っ赤にしながら【4ピン】を切ってフリテンリーチを打っているところだ。

南2局2本場
アガってトップに躍り出た一井に、またしても早いテンパイが入る。

ダブ【南】を暗刻にしての【4マン】【7マン】待ち。
これまた通常なら迷わずにリーチを打つ手牌だが、親番が連荘中の志岐なのだ。

志岐にトップを取られたらほぼ終わり、という条件なら、この親を落とすためのダマテンに心が揺れてもおかしくはない。
リーチすることによってアガリ確率が下がることは間違いないのだ。

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