麻雀星人・多井隆晴が紡ぎ出した 至極の１牌【Mリーグ2023-24観戦記 10/10】担当記者 ZERO / 沖中祐也

四暗刻イーシャンテンだったが
「ももがほとんど山にいる感じではなかった」
と語る東城。
たしかに全員が１・９・字牌を切り出しておりタンヤオ模様である。さらに開幕の4000オールによってトップ目に立っていることも大きいか。

とはいえ、三倍満確定の手牌をリーチするくらい豪快なイメージの東城だけに、現実と折り合いをつけたのが意外だった。

このポンによって多井の手元にやってきたのが…

だった。多井は音速でリーチを宣言。

切られた牌をマトリクス上にカウントしているという多井。
例えばピンズなら

というようにだ。この脳内のマトリクスを使って相手の手牌を推測していく。
そして特筆すべきは字牌も同様にカウントしていること。

だからをツモった瞬間に、捨て牌を確認するまでもなくリーチ発声ができたのだ。

ABEMASサポーターの祈りが

歓喜に変わる。

リーチ・ツモ・チートイツ・赤１の4000オールで、トップ目の東城の後ろ髪が触れるまでの位置につけた。いい匂いがしそう。

そしてこの日一番のハイライトとなる南１局を迎える。

まずは瀬戸熊が３巡目に

でリーチ。

これが６枚山に残っていて、アガリは時間の問題かと思われた。

（クマちゃん、はえーよ）

と不満をあらわにする多井の手牌がこちら。

安全牌がの１枚しかなく、一応イーシャンテン。

安全牌を増やすという意味も兼ねて多井はここからを押す。

そして分岐点となったのが６巡目。↓

開拓したおかげで安全牌は・の２枚に増えた。

トップ目だしイーシャンテンとはいえ愚形含みでそこまで魅力のある手牌ではないし、オリてもおかしくはない。

もちろんまだ通っていない筋は多いのでないしを切って押す手もある。

押すか、降りるか。

多井の取った選択は、そのどちらでもなかった。

この選択１つだけでご飯３杯いけそうだ。

正直、私はこの選択が真似できる気がしない。

ずば抜けた才能を持ち、ずば抜けた努力をしてきた麻雀星人の紡ぎ出した選択がこちらだ。↓

打。

通っていない牌を切って２シャンテンに戻すという世にも奇怪な選択。

「リーチしているのが上家というのが大きかった」

と多井は語る。

つまりそれはどういうことかというと…

鳴いてタンヤオに向かえるということだ。

上家の牌を利用しつつ、ドラのや赤を使ってマンガンも十分狙える。

よく見ると全ての赤を使い切れる手牌でもある。

物語は終わらない。

瀬戸熊のアガリ牌であるをツモ。

喰い流した格好（チーしていなければ瀬戸熊はツモっていた）になっている。

多井はワンチャンスのをプッシュ。

そしてついに

をツモって追いついた！

だが、出ていくは瀬戸熊のアガリ牌。