勝負の流局、日向藍子が作り上げた4,000点の壁【Mリーグ2023-24観戦記 1/8】担当記者 #江崎しんのすけ

日向はトップ目の勝又まで11,100点差で、最後の親番が控えているとはいえ少しでも加点してオーラスの負担を減らしておきたい。

この局も手が入る。
3巡目にソーズの一通が見えるイーシャンテンになる。

【7ソウ】から入れば跳満まで狙えるチャンス手だが、この手が3巡目から全く変化しない。

ツモ切りを10巡も続け、気が付けば河も3段目に突入している。
親の寿人が切った【7ソウ】をチーして【6ピン】【9ピン】待ちのテンパイを取る。

そしてその4巡後、日向の最終ツモ番で【6ピン】を引く。
大きな加点とはいかなかったが、300-500をツモって最後の親番勝負に持ち込むことができた。

しかし、日向は【6ピン】を右端に置き止まる。
そしてアガリを宣言せず、打【8ピン】とした。

日向からみた河がこちら。

日向は他の3人がノーテンだと推測し、1人テンパイで3,000点もらう方が得と考えてあえてアガらずを選択したのだ。

まず下家の醍醐は国士っぽい捨て牌から終盤は安全な字牌を連打しているので、オリているとみていい。

対面の勝又も途中までは手を作っているようだったが、3段目に入ってからは親番の寿人にテンパイを入れさせないように、寿人の現物だけを切っている。勝又もテンパイしていないと見ていいだろう。

問題は親番の寿人だ。

寿人は序盤1・9牌から切り出して、中盤に字牌を連打している。これはリーチではなく役牌の重なりからの鳴き仕掛けを狙っている河で、つまりはリーチまで狙えないような形の悪い配牌の時に現れる河。

日向はテンパイしていないと読んでいたようだが、直前に手出しも入っているため、他の2人ほど自信をもってノーテンだとは言えないと思われる。

寿人はダンラスではあるものの、目下のライバルは日向で、もし4,000オールでもツモられるものならほぼ並びとなる。

寿人がほとんどテンパイしていない、仮にそうだったとしても、日向がアガらなかったことで本来存在しなかった寿人の親番が生まれる可能性を考えると、簡単に決断はできないだろう。

日向は自身の読みと直感を信じ、アガリではなく流局を選択した。

結果は日向の読み通り一人テンパイで、トップ目勝又との点差を4,000点縮めることに成功する。

この4,000点が、勝敗を決めた大きな壁となった。

南4局3本場まで連荘を続けた日向。
勝又を逆転し、4,500点差のトップ目に立っている。

日向は一人ノーテンでも逆転されない点差までリードを築くことができたため、この1局さえ凌げばトップを持ち帰ることができるのだ。

勝又の条件は700-1300点のツモ。
タンヤオ・三色を狙い仕掛けを入れるも、急所の【6ソウ】が山に残っておらず、テンパイまでたどり着くことができない。

そして3着目の醍醐はトップまで跳満ツモ条件で、2着までなら満貫ツモで足りる。
ソーズの染め手を狙っていたが、親の日向が【7マン】をポンした直後にドラの【4マン】を引きギブアップ。

醍醐は裏インタビューにて「トップまでの条件が満貫ツモだったら【4マン】も推していた」と話していた。

ここでも南3局の4,000点が効いてくる。
あの4,000点がなければ醍醐の条件は満貫ツモになっていて、

【4マン】を押していれば、チンイツ【6ソウ】【9ソウ】待ちを捉えて逆転トップだった未来があり得たのだ。

最後は醍醐の一人テンパイで流局。
日向は個人2勝目を持ち帰ることに成功する。

麻雀はリードしている方が多くの選択肢を持つことができるので有利になる。しかし同じ持ち点からスタートする以上、リードを築き有利な立場になるためにはどこかでリスクを負う必要がある。

相手の手や山を推測すること以外にも、勝負所で自身の読みに身をゆだねることができるのも、麻雀の強さの1つであり、日向の強さが存分に発揮された試合となった。

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