自分を信じて。不死鳥のごとく復活した 魚谷侑未の貫禄。【Mリーグ2023-24観戦記 2/13】担当記者 ZERO / 沖中祐也

リーチ・タンヤオピンフ・ツモ・赤・裏の6000は6100オールをツモれば、浅見も8000、2600オールとツモって巻き返していく。

浅見に並ばれた直後、魚谷の手牌↓

ペン【7マン】の三色・ドラ1のテンパイだ。
浅見の親を落としたいだけならダマテンでいい。
が、

魚谷はリーチで攻め立てた。
まだ東場であり、順位を強く意識する段階ではないので、さらなる加点を狙ったのである。

一発を受けた浅見の手牌がこちら。

まっすぐいくなら打【4ソウ】
やわらかく【白】を切るというルートもある。
【白】はタンピン三色に成長して帰ってくる可能性が高く、攻守兼用の選択だ。

いいえ私は

おとめ座の女!
ど直球の【4ソウ】を場に放つと、すぐにテンパイして追っかけリーチ。

ツモって1000は1100オールと打点こそ安いものの、ライバルの勝負手を最速でかわすことに成功した。

「はい」
魚谷はどのような痛恨の放銃をしようと、必ず返事をする。
それは運命を受け入れ、次の局へ向かうための心の準備。

今でも思い出すのが5年と半年前。そう、Mリーグ開幕戦。
魚谷はずっと相手の和了を眺めているだけで、南場に入る頃には大きく箱を割っていた。
どんな開幕戦になるのだろうと日本中の注目が集まり、自身も期待を膨らませていただけに、その落差は大きかったのだと想像できる。

「はい」
いや、そこでも魚谷は冷静に運命を受け入れていた。
そして南1局に会心のマンガンをアガったのである。

 

その後、魚谷はMVPを獲ったりと活躍をすることになるが、平均で言うとMリーグでは厳しい戦いが強いられ続けてきた。
それでも、自分を信じて麻雀と向き合う姿に、ファンは感動を覚えるのだ。

どれだけ点棒を失おうとも、あの日のマンガンのようにいつか報われる時がくる。

回想シーンがカットインしたら勝利フラグというのは観戦記の常。
魚谷は一旦浅見にトップの座を受け渡したものの、次局に

ここから【發】をポン。
2000点の仕掛けだが

トイトイに変化して8000は8600を滝沢からゲット。

これで魚谷49700浅見46300。
かつてこんなに上下2人ずつ別れたことがあったろうかというくらいのデッドヒートになったが、魚谷はここからさらにアガリを重ね、長い東場を終える頃には浅見を突き放しつつあった。

南2局、魚谷の親番。

自分の手はタンピン(おまけに三色)のイーシャンテンだが、浅見からリーチが入っている。

・点差が25000点ほど開いている
・ライバル
・現物が複数ある
・無筋が2枚浮いている

数々の要素がオリ寄りに傾く中、魚谷は思案する。

さきほど言った通り、魚谷はMリーグでこそ思ったような成績を残せていないが、それ以外のタイトル戦では異常と言えるほどの勝ちを重ねている。

特筆すべきは女流専門のタイトルだけでなく、十段位・王位・麻雀日本シリーズ・日本オープン… といった男女混合のタイトルでも多く勝っていることである。

その多くの経験を経て、魚谷は勝ち方を体に刻んでいったという。
あ、これはこういうパターンだな、と展開をいくつか分類し、その中での最適な立ち回りを体が覚えていくのだ。

いくつかある展開の中でも、優勝争いが1対1になったとき、魚谷は阿修羅のごとく押していく。
普段はバランス型と言える魚谷が、ここぞの局面では強引に押し、アガリをもぎとるのだ。
こう打たないとタイトルは取れない、と我々に教えてくれるよう。

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