卓上のヒットマンが測った
射程距離
松本吉弘が誇る安定感の理由
文・後藤哲冶【金曜担当ライター】2024年3月7日
Mリーグレギュラーシーズンも各チーム残り15戦を切った。
この最終盤に差し掛かる時期に、ここまで下位チームが競っている状況は今まであっただろうか。
生き残りをかけたラストスパート、ファンからの声援も、心なしか含む感情の量が大きくなっているような気がする。
このレギュラー生き残り戦線、一歩抜け出しているのが渋谷ABEMASだった。
この日の第1試合、白鳥がトップで逃げ切りを成功させれば、ここからはもう上を見て戦っていけるかという場面だったが、MVPを争うU-NEXT Piratesの瑞原がそれを許してはくれなかった。
オーラス無慈悲な6巡目の役アリ逆転テンパイに、白鳥も流石にお手上げ。
惜しくも2着で1戦目を終えた。
そうしてバトンを託されたのが、松本吉弘。
ここまでの通算成績でも安定感抜群のショウマツリレーで、渋谷ABEMASは上昇を狙っていく。
3月7日 第2試合
東家 鈴木優 (U-NEXT Pirates)
南家 松本吉弘(渋谷ABEMAS)
西家 鈴木大介(BEASTJapanext)
北家 茅森早香(セガサミーフェニックス)
東2局
親番で良い形が入った松本。
松本はピンフ三色のイーシャンテンになったところで、のトイツに手をかけた。
そして、次の巡目に持ってきたはツモ切り。
更に、その後持ってきたも一切躊躇わずにツモ切りとした。
やを残した方が、シャンポン受けを残せるため受け入れ枚数は増える。
が、そうして増えたシャンポンを引いてテンパイを入れた場合、ピンフも三色も消え、基本的にはリーチのみだ。
リーチのみに全力を注ぐよりは、を先に引いた時にの出アガリ率を少し上げるイメージ。
仮にこの松本の捨て牌が、のトイツ落としが完了した後、安全牌を切ったのち、リーチ宣言牌がになった場合、は他家にケアされやすい。
をツモ切りとしておくことで、後に高目となるかもしれないを少しでも出やすくしたかったのだろう。
結果的には、を引き入れてリーチとなったので関係はなかったが、これも松本の誇るベストバランス。
そしてこれを、見事高目一発でツモり上げた!
リーチ一発ツモピンフ三色の6000オールは、大きな加点。これで一歩抜け出すことに成功。
松本のリーチ一発目に大介の河に並んでいるが、松本のツモ切りが効果的に作用しているのを物語っている。
東4局
トップに立った後も、松本は攻めの手を緩めない。
東場での6000オール程度では、このルールでトップが盤石ではないことくらい、松本はよく分かっている。
役牌2つとドラが対子の良い手。何からでも鳴いていきたい手だが、優から切られたはスルー。
現状一番厚く持っているターツで、チートイツイーシャンテンでもあるこの形からわざわざチーするよりは、次に引いた牌がチートイツテンパイの牌である可能性を見たい。
東が出て、これをポン。
を切って6ブロックにする手もあるが、ここはの対子落とし。
例外はもちろんあるが、基本的に副露手は5ブロックに構えた方が良い事が多い。
をチーして、ここで切り。
発とという対子があって、ここで手を2ヘッドに構える。
現状トップ目で遮二無二、手を中張牌で膨らませる必要はない。
全員に通っていないは持たずに、全員の安全牌である白を持つ。2ヘッドに構えているので、ロスはの2枚だけだ。
これが、松本が測った、相手との距離感。
致命傷を負うリスクがある距離までは近づかず、こちらが狙いを定められる位置をキープする。