最強戦は単純。
強者4名が名勝負を繰り広げ、
最後は鈴木大介が勝つ大会である
【決勝卓】担当記者:東川亮 2024年6月15日(土)
麻雀最強戦2024「Mリーガーvsタイトルホルダー」決勝は、文字通りの打ち合いになった。
それは、ただでさえアガリへの精度が高い強者たちが、トップにしか意味のない戦いで常に前へと出て行ったからだ。
東2局、親のむくがソーズのホンイツで仕掛けた大介にソーズ待ちのリーチをぶつけてツモアガリ、2600オールのアガリで加点。
次局は谷井が早い確定三色のリーチを優から出アガリ、裏ドラを1枚乗せて8000は8300。
そして、打ち合いと言えばやはりこの人の出番である。5年連続ファイナル出場、最強位を契機に麻雀界で名を馳せ、Mリーガーにまでなった大介は、今や最強戦の顔とも言える男。
東3局、ピンフ高目タンヤオの待ちでリーチ。ただ、河をよく見ていただきたい。が既に4枚切れ、いわゆるペン待ち。高目しかなくて3900以上の打点が確保されているとは言え、これを逡巡なくリーチといけるところはなんとも大介らしい。
そして攻め屋と言えば、この人も忘れてはいけない。同じ鈴木姓の優、二つ名は「戦闘民族」。
リーチに対して4フーロ目のポン、裸単騎を敢行。大介のリーチは河が強く、が通ったとは言え手牌4枚でオリきれるものでもない。打点も中トイトイで5200とそこそこ、だったら押し切ってやろうと、アグレッシブに仕掛けていく。
親番の谷井も参戦。3メンチャンで追っかけリーチ、待ちはここが一番強い。
谷井が圧倒的有利に見えたが、つかんだのは。
裏ドラが1枚乗って、大介が谷井から8000を直撃。一進一退の攻防が続く。
一人遅れた格好の優だったが、「最強戦の申し子」はこのままでは終わらない。前局にむくから6400は6700をアガって迎えた南2局、優は4巡目のシャンポン待ちテンパイを拒否、を軸に好形変化を狙っていく。
直後にをツモっていったんはアガリ逃しをした格好だが、を引いてフリテン3メンチャンでリーチ。もちろん、相手からはそんなことなど予想できるはずもない。
潤沢に残っていたアガリ牌をしっかりとツモり、裏ドラを乗せて2000-4000、トップを猛追する。
そうして迎えたオーラス、トップ目はなんと谷井の26200点。谷井と大介はアガリ競争、1本場供託2本で、ラス目のむくですらそう重くはない逆転条件が残るという、まれに見る混戦となった。そして混戦の縮図とも言えるような重厚な一局となったのが、南4局1本場である。
4巡目、1メンツができたところで、優はをトイツ落とし。タンヤオでの仕掛けも見つつ、くっつきの可能性を目いっぱいに見た進行とする。安いアガリではそれほど条件が変わらず、3者を突き放せるようトイツのドラを必ず使いきりたい、という思惑もあったか。
谷井が役牌のを重ね、役を付けられるようになった。これが鳴ければ、あとはアガリまで一直線だが。
大介も、チーから発進。配牌からある程度形がまとまっていてタンヤオがはっきりと見え、アガリまでの道筋は開けているように見える。だがもちろん、その道を歩み切れるとは限らない。
現状がアガリに必須の谷井だったが、はスルーした。は各者がアガリに出てくれば危なかろうと切られそうな牌で、鳴いて突っ込む選択もあったが、鳴いた後のターツをまだ選びきれない、という判断か。
必死に勝ち筋を探る谷井。いい顔をしている。父の顔、そして団体を背負う男の顔だ。
大介がチーでファイナルへ王手。カン待ちも、山にはまだ残っていた。
谷井もチーで前に出るが、孤立のではなくのトイツ落としを選択。は全方向に鳴かれうる牌であり、大介のロンもあるかもしれない。ギリギリまで絞る。
を欲していたのは優。鳴けば話は早いのだが、それを谷井がさせない。
123三色などが見える形だったむくが、を引いてをリリース。局が中盤から後半に差し掛かってきたところでつかんだ生牌、これを軽々に切って大介や谷井に役を付けるのは最悪だ。実際、谷井にとってこのは急所中の急所だった。
続いて大介のロン牌を引き、ペンターツを外して受けの選択。このままではアガリが見込めないと踏んで、優の連荘に託した。
むくも麻将連合の代表として、団体の看板としてこの場に立っている。簡単に負けるわけにはいかない。アガるためではなく、勝つために、むくは勇気と知恵を振り絞る。
優はテンパイが勝利への最低条件。捨て牌は3段目、もう四の五の言ってはいられない。カンをチーして、ひとまず形式テンパイに向かう。おそらくが絞られているのも感づいているのだろう。
そのチーで、大介のアガリ牌、最後のがむくに流れた。各者の意地と粘りが容易にアガリを生まず、勝負をますますもつれさせる。