「魔神」渋川難波 前年度王者の望みを刈り取る冷徹な一打【Mリーグ2023-24セミファイナル観戦記 4/29】担当記者 #東川亮

渋川は、最後まで徹底していた。南4局、勝又に【中】を鳴かれた直後、1シャンテンで選択。

場の状況がこう。

勝又は【中】ポン出し【5マン】で、またぎになる【3マン】【6マン】はロンと言われてもおかしくない牌だ。もしホンイツになっていたら、放銃時の打点は3900からで、トップ陥落となる。

ただ、一方で打点条件のある多井が【1ピン】を鳴いているのも気になっていた。もし超高打点を振り込むようなことになれば、当初のもくろみが土壇場でご破算になってしまう。

実際に、多井はドラの【北】を複数抱えるホンイツトイトイで、倍満まで見える手になりつつあった。

多井の高打点、そして親の伊達のリーチだって飛んでくるかもしれない。それを阻止するには、今勝又に打ち込んで試合が終わってもいい。勝又がホンイツならどうせツモられれば逆転されてしまうのだから、放銃したとてほとんど同じこと。

もちろん自分のアガリも残しつつ、渋川は【6マン】を切った。

勝又、トップ目からの直撃で逆転トップ。平時ならばいわゆる「デバサイ(出場所最高)」、悔しくて歯ぎしりしてしまいそうな放銃だろう。

だが、その表情に悔恨や苦悩はない。

渋谷ABEMASの望みを刈り取るその一打は、「魔神」渋川難波が自らの仕事を完遂するための、最後の仕上げだった。

全ては、ファイナル進出のために。

今は対局場を赤く染めさせておけばいい。

ファイナルでは、この場所を桜色に染め上げてやる。

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