堀慎吾、
純度100%の天才の戦い。
文・渡邉浩史郎【火曜担当ライター】2024年5月7日
第2試合
東家:園田賢(赤坂ドリブンズ)
南家:鈴木優(U-NEXT Pirates)
西家:松ヶ瀬隆弥(EX風林火山)
北家:堀慎吾(KADOKAWAサクラナイツ)
「オカアリルールでの2強体制は、追う側にとって想像以上に厳しい」
ファイナルが始まるとき、同様の順位点ルールで戦っている日本プロ麻雀協会員の人々から多く聞いたのがこの意見だ。
1チームが飛びぬけている1強体制であればそのチームにだけはトップを取らせないという三者の思惑が合致し、じわじわとにじりよることができる。自チームがラスを引いても独走する首位チームとトップラスを決められる可能性は1/3だ。
しかし2強体制ではトップを取らせてはいけないチームが2方面に存在する。自チームがラスを引いた時、2/3の確率で致命的なトップラスを決められることとなる。
さらにMリーグは各順位ごとに賞金が決まっている。そのため中終盤にかけて現実的に優勝は無理というチームが出てくれば、一つでも上の着順を目指す動きへとシフトすることになり、追う側もただがむしゃらに優勝を見ていられなくもなる。
それでもなお、「2位・3位に興味なし」と豪語したのが……
現在チーム3位、天才堀慎吾だ。
GW明け、運転疲れの出勤パパ達みたいな対局前控室だが、見て分かる通りの化け物たち勢ぞろい。
最高の条件戦、最恐のファイナルの一戦がこの日飛び出した。
まず場が動いたのが【東2局】。
優の親リーチ、松ヶ瀬のドラポンに追いついた園田が一発で優から跳満を召し取る。
これでひとまずの並びが完成。この好機を見逃さずと言わんばかりに、松ヶ瀬と堀が和了りを重ねる。
優包囲網が明確に敷かれたのは【南2局1本場】、優の親番。
ここまで我慢を重ねてきた優が動く。
トップ目の園田の第一打ドラをポンして打。けん制で周囲を抑えつつ、チャンタや役牌での和了りを目指す一打だ。
ちなみにこの半荘のドラポンはこれで四回目。それだけドラが場に打たれたということは、だれもが優の復活を許さぬように真っ直ぐ和了りを目指していたことが伺えよう。
ここの対抗馬は松ヶ瀬。暗刻赤赤で三色も伺える。仕掛けての高めマンガンも魅力的だが、門前でハネマン・倍満級での一撃も決めたいところ。
園田はここで七対子粘りに舵を切る。チャンタっぽい優の手出し、からならより先に切られるだろうと、余り鳴かれにくい牌を選んで安全牌を残す。
あまり伸びなかったこの手で自分のすることは優への絞りだと表明するような一打だ。
さらに優からポンが入って打。
親の手が進んだのを見て、松ヶ瀬が渋々チーテンを入れる。
打で待ちは。
これを受けて堀の手が止まる。
優が聴牌かノーテンかは不明だが、とにかくドラポンの優の和了りは歓迎できない状況。
ならば松ヶ瀬の手はどうだろうか。
あの守備型の松ヶ瀬が優の仕掛けに生牌のを押している。半端なシャンテン数ならば別の牌を切る選択になりそうで、そう考えるとを切った時点でまず余剰牌のないイーシャンテン。このチーはチーテンであることは明白だろう。
後は打点について。ドラが全部見えており、染め手でもなさそうなため、松ヶ瀬の仕掛けの打点は赤の枚数と1飜役が何個複合しているかに依存する。
ここで注目すべきは、を切っている松ヶ瀬が安全牌のを抱えずに最後まで持っていただ。先に述べたように、このはまず間違いなく手牌に関連する牌。堀の目からが三枚見えているため、残る形はのほぼ一点。
ここまでで和了り役+までは確定。仮にをチーしてマンガン聴牌なら、一枚目の時点でチーでもおかしくない。二枚目のチーのため、打点に三色は付きにくく、MAX3900を見越して……
堀はを差し込んだ。
カンの聴牌はこのタイミングで差し込まなければ降りてしまうかもしれないと語った堀。
冒頭に述べた「オカアリルールでの2強体制は、追う側にとって想像以上に厳しい」は、堀自身が語っていた言葉でもある。
優勝を目指すのであれば、差し込む相手としては下の下であることは百も承知。それでも堀は今のパイレーツラスを崩さずに、残り親番含めた最短二局を戦うことを選んだ。
【南3局】、松ヶ瀬からこの三巡目親リーチが飛んできたときの堀の心境や、いかに。