
叩いた後、その両手を後ろに突き上げ、親指を背中に向けるような姿を見せたのである。
それはまるで
『お前の為にチームがあるんじゃねぇ。チームの為にお前がいるんだ。(安西先生)』

三色を捨て役牌バックで動く萩原。

自分に押し潰されそうにながらも、一鳴きを見せる黒沢。

本日の第一試合目、アガリに行きたい気持ちを抑えながら最小失点の4着を引き受けた本田。
あの名言が呼び起こされそうな…
南4局

瀬戸熊テンパイ。
ピンフ・赤・ドラ5,800
アガればトップが大きく近づく…。ましてや堀からの直撃なら…。反対にリーチ棒出して3,900放銃したら4着…。
様々なシチュエーションが飛び交う。
だがしかし、そんな理屈めいた空論など瀬戸熊には一切通用しない。
なぜなら

両手を掲げた理由。それは…

今はチームとして本田のラスをリカバリーする責任を背負ってるから。
そして、長年に渡って培ってきた経験が背中を後押しをしてくれるから。

瀬戸熊は雷鳴が響き渡るような約束されたツモアガリでトップ目に立つと
南4局1本場

最後は自身のスタイルよりもチームの勝利を最優先に選び、迷わずを差し込んだのであった。

レポーター・襟川麻衣子
「南4局のリーチ判断について迷いなどはあったのでしょうか。」
瀬戸熊直樹
「あの場面はリーチするって決めていました。僕の大先輩である荒さんがリーチで決めてきているのを何度も見てきたので。それを見て僕は育ったんで…。」
荒とは日本プロ麻雀連盟副会長でもある荒正義のこと。連盟G1・5タイトル獲得している唯一のグランドスラム達成者として名を刻む。まさにレジェンド中のレジェンドである。
今現在、少し体調を崩しているのだが、それでも瀬戸熊にとって、その背中は今もなお大きな存在という事。見続けてきたその姿を胸に刻み、尊敬と感謝、そしてエールを込めて語ったように聞こえた。

そして、レギュラーシーズン敗退の場合、選手の入れ替えを余儀なくされるTEAM雷電。
「雷電の麻雀は面白いんです。」
もしたしたら、今は“自分らしく”よりも“チームのために”戦っているのかもしれない。
それは、先に続くステージで本当の“面白い麻雀”を打つための布石なのだろうか。
それを確かめる為に。
ますます、この先が楽しみでならない。
そして、僕たちは
これからも瀬戸熊の背中を見続けていくだろう。