クイーンとジョーカー
逢川恵夢と永井孝典
文・小林正和【金曜担当ライター】2025年9月19日
昨日までの残暑が嘘のように、今日の東京には秋を感じさせる涼しさが漂っていた。
曇り空からこぼれる陽射しがアスファルトをほのかに照らす。
すると、足早に通り過ぎる人々から身を隠すように、一枚のトランプが白線の片隅に落ちていた。
それは、気品に満ちて澄ました微笑みを浮かべるクイーンの絵柄。しかし、その瞳の奥はどこか悲しげな顔つきをしている。
また、そのすぐ隣にはもう一枚。
道化の仮面を被ったジョーカーが転がり込んで来た。
無邪気に嘲笑うかのようなその表情の裏には、どこか人間味のある優しい目を持ち合わせている。
そして2枚のカードが重なった瞬間、街のざわめきは掻き消され、気づけばそこはスポットライトが照らすMリーグの舞台へ。
新たな物語が──静かに、そして確かに始まろうとしていた。
第1試合

東家:瀬戸熊直樹(TEAM RAIDEN / 雷電)
南家:逢川恵夢(EARTH JETS)
西家:永井孝典(EX風林火山)
北家:多井隆晴(渋谷ABEMAS)
新Mリーガーに立ちはだかる経験の壁
今季から電撃参入した新チームEARTH JETSからは、逢川恵夢。
そして、新生・EX風林火山からは、同じく新Mリーガーの永井孝典の二人が、揃って緒戦に登板した。
だが、その舞台に立ちはだかるのは、長きに渡って経験を積み重ねてきた二人の存在であったのである。
まずは、親番の瀬戸熊がいきなり“挨拶代わり”とばかりに雷鳴の剣を抜いた。

東1局
リーチ・赤2・ドラ
12,000
開始早々、逢川の希望を打ち落とすような一撃で卓上に響かせると
東1局1本場
リーチ・一発・ピンフ
5,800は6,100
再び逢川のリーチ宣言牌を打ち取り、完全に主導権を握っていった。
そうなると負けてはいられないとばかりに今度は──
共に麻雀界を長く牽引し、時に肩を並べ、時に真正面からぶつかり合ってきたライバル・隆晴が動き出す。
東2局1本場

“明日Mリーグが無くなってしまうかもしれない”
“今年は危機感を持って結果を求めに行く”
開幕前の囲み取材でそう語った多井。
5巡目に1,000点カンチャン待ちという不満が残る中、それでものポンテンを取ると
点数こそ小さいものの、他者の好機を奪い去る最速のアガリで結果を残した。
また東3局の永井からリーチを受けている局。

あえて通ってないドラのを切ったのである。
その意図は… もちろんトイメンの逢川からを吊り出し、ポンを入れる事によりリーチ者のツモ番を物理的に無くそうとしているのだ。
この試合、4着となってしまった多井だったが、
(俺達はまだまだ負けるわけにはいかない)
その無言のメッセージは鋭く、新Mリーガーの二人にきっと突き刺さっただろう。
更に衝撃だったのが、東3局2本場