未来を渇望した福島祐一、田村洸の執念の前に散る。【麻雀最強戦2025 激突タイトルホルダー】観戦記【B卓】文:千嶋辰治

3巡目に字牌の整理が終わった田村。
まだハネ満の姿は見えない。
対する福島。

同じタイミングでリャンシャンテン。
ドラを増やすアンカンはしないだろうが、テンパイしたらさっとリーチを打って、優からのアシストで決着だろう。
田村と福島。両者の手のまとまり方が違いすぎる。

しかし。
奇跡は起こったのだ。

6巡目。

ツモが全く利かなかった田村。この【8ソウ】も良いツモとはいえないが、ドラに寄り添う牌。これをどう生かすか?

遠くの霞の中で微かに見えていた567三色を見切る打【7マン】
リーチ、ツモ、ドラの他に役があと3つ必要だが、ここから田村に怒濤の如き好ツモが押し寄せる。

【7ソウ】【9ソウ】【6ソウ】とツモってイーシャンテン。
そして、

【8ソウ】をツモってあっという間にチートイツのテンパイ。
リーチをかけて一発かツモなら大逆転の2位通過が叶う。
あとは待ちをどうするか。
このままリーチか。あるいは他の待ちごろの牌を探すか。

田村、どうする!

「リーチ!」
場にはソーズの6から上がバラッと切られていて【7ソウ】は勝負に値する。
そう考えた田村は、一身を投げて牌の審判を待った。

同巡。

ターゲットの福島もテンパイした。

三浦、田村、そして優がジャケットとネクタイでキメて来たのに対して、福島はご覧のようにカジュアルな出立ちでコロシアムに姿を表した。

「自分は、王位を獲るまで目立ったことがない無名のプロだった。何か目立てることをやりたいと思ったのと、自分を変えたいと思った。」

対局後にそう話した福島。
髪型を変え、同じ団体でファッションリーダーとの呼び声高い白鳥翔に衣装の相談をし、実に18万円近い衣装代を払って自身に投資した。

日々研鑽に努め、十数年のプロ生活の末にようやく掴んだタイトル。
これをきっかけに人気プロへの階段を登りたい。
軽めのスタイルとは裏腹に、その悲壮な思いは察するに余りある。

その福島。

テンパイを入れたものの、表情は冴えない。
リーチ棒を出すと、田村の条件が緩和され満貫ツモでかわされてしまう。
しかし、ヤミテンでは出アガリができない。

「リーチ。」
圧倒的なリードを築いたはずの福島。
しかし、田村の猛烈な追い上げに結局は逃げ切りが許されなくなった。
卓上を見つめる顔は、むしろ追い込まれているようにさえ見えた。
そして、福島は踏み込んだ。

決着はその刹那だった。

真っ直ぐいくより他に道がない三浦から、力なく打ち出されたのは【7ソウ】
一発あるいはツモなら条件を満たす田村から手が開かれる。

裏ドラ2枚を乗せてリーチ一発チートイツドラ2ウラ2の倍満!
執念の一撃が福島を一閃、田村が決勝進出を果たした。

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