ハロウィンの夜に微笑む航海士──鈴木優、荒波を制す──【Mリーグ2025-26 レギュラーシーズン 観戦記 10/31 第2試合(麻雀チャンネル)】担当記者 小林正和

「オバケなんてうそさっ🎵」と、こちらも通っていない【4マン】をポイッ!まるで何事もなかったかのように放つ。

そして注目したいのが、この後に残った浮き牌【9マン】の存在だ。
滝沢のリーチは【5マン】切りのあと、比較的安全そうな【1ソウ】を挟み、そこから【8マン】手出し。つまり【9マン】は裏筋にあたる、いわば本命の危険牌ということ。

要するに、この牌も放ちますよ!という合図だ。しかし、優にとってこの【9マン】は“おおどおし”。それほど危険な牌ではなかったのである。

こちらは、滝沢が【8マン】を捨て時の全体図。

この時すでに【6マン】が2枚、狙い目の【9マン】も2枚顔をみせている。よほど他に弱いターツがない限り、ここで【7マン】【8マン】【8マン】からリャンメン固定はしないという読みが成立するのだ。

だが、なんでもかんでも押すのは“強気”ではなく、“ただの無謀”。

ドラ跨ぎの【3ソウ】を引いたところで、一歩バックとなる【北】をノータイムで切る。

ちなみに地味なプレーだが、この間のなさがいい。手牌の見えない相手からすれば、回ったのか、それともテンパイしたのか判断がつかない。巧みな演出だ。

この後、優の河に【北】が連続で並ぶと

ようやくここで、滝沢の表情にわずかな安堵が浮かぶ。
(やっとオリてくれたか……。)

──そう思った、その瞬間。

実は、オリてはいなかったことが判明する。


「チーッ!!」

浮いていた【3ソウ】が再び使える形で息を吹き返す、粘り込みの一手。

結果的にこの局は、滝沢の一人テンパイで終わったが…

この仕掛けによって、高目のドラ【5ソウ】を食い下げていたのだ。

序盤から、滝沢に圧をかけていく。こういう一局こそ、見えない疲労となり蓄積され、意外と後になって効いてくるもの。

ほんの数牌の押し引きや思考のリズムを微妙に狂わせたり、長いシーズンを戦う中で、“嫌な記憶”として残ることだってある。

うーん。
(もちろん良い意味で!)実に“ウザい”アングルだ(笑)

こうして勝負の世界では、心理を揺さぶる一手も立派な武器。相手のリズムを崩すだけで、局の流れはガラッと変わる。

ここでは、その例を二つ紹介しよう。

まず一つ目は、東3局の親番・優の配牌から。

救いはドラの【3ピン】がトイツという点だけで、全体的にはバラけた手。

まるで仮装パーティーが始まる前のごちゃついた控え室のよう。どこから片づけていいのか分からない。けれど、こんな配牌から“魔法”をかけて形にしていくのが優という戦闘民族だ。

【白】が重なったタイミングで【1ソウ】をポン。本線は役牌バック。
ツモの流れ次第ではトイトイ、さらにはMリーグ史上まだ誰も成し遂げていない“三色同刻”まで見える。

これはアガリを目指す者の視点での話。
しかし、他家の目にはまるでゾンビが、次にどんな“トリック”を仕掛けてくるのか分からないような、不気味さが漂っていた。

この仕掛けの“トリック”のポイントは、なんといっても巡目の早さだ。役牌を含めたション牌の種類がまだ豊富に残っている。いや、残っているからこそ仕掛ける意味があるのだ。

特に他家からしたら、ドラの【3ピン】とかダブ【東】って、一気に高打点に化ける危険牌。そりゃあ嫌でも意識がいく。

優が仕掛けた直後、滝沢はそっと【東】を手牌を左へ寄せた。
それはまるで、この牌はもう触らないとでも言うような静かな意思表示。

続く内川もまた、攻めたい衝動をぐっと飲み込み、【東】を静かに手の内へ。

そして、その連鎖は“オリないMリーガー”の代表格である本田のもとにも届く。

こうして三者の手が、まるで透明なロープで縛りつけられているかのように場が静止した。

そんな中、ただ一人。
優(ゆう)が、悠々(ゆうゆう)とツモ牌へ手を伸ばし続ける。

【白】・ドラ2
2,600オール(+1,300)

あのバラバラだった手が、気づけばカタチになってる。
一つ仕掛けを見せただけで、周りは勝手に“高そう…”ってゾワッとする。

まさに“一つ見せることで見せない”という心理を揺さぶったハロウィン・マジック。

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