終点のスタジオに猛者集合 吉永和生、ハナ差の逃走劇 【麻雀最強戦2025 全国アマチュア最強位決定戦】観戦記【D卓】文:中野巧

南4局

3着目で迎えたオーラス。かめんたんはここまで自分の勝負手が山部に交わされ、相手のリーチにきっちりオリるなど我慢の展開が続いていた。勝つには役満ツモか直撃条件。落ち着いた手つきで、果てしなく遠い6種から国士無双を狙っていく。

続々とヤオチュウ牌を引き、ついに国士無双テンパイ、山には2枚残りの【北】待ち。今年の最強戦はすでに滝沢和典国士無双松本吉弘四暗刻と2回も出ている役満。しかも松本はオーラス役満条件を満たし大逆転だった。


かめんたんの入り込み方をみた私は「絶対にツモる」と感じた。

焼肉定食。から切られる【北】。ただここからはアガれない。顔を下に向けたまま、国士無双のテンパイを悟らせない。

裏4条件の焼肉定食。がドラの【8ソウ】をツモって終局。

負けたときにこそ、その人の性格が出る。かめんたんは自身の役満テンパイを交わされた相手にも「はい!」と大きい返事をしてから点棒を支払ったのが印象的だった。彼の最強戦2025は一度ここで幕を閉じる。
入場シーンから試合中までずっと身に着けていたオクタゴンのパーカー。

 

2着 焼肉定食。2020年忘れ物探しの旅

クセのある名前と服装で登場した、焼肉定食。約5年ぶり、2回目の本戦出場だからか落ち着きがすごい。これまで彼はずっと地方も含め最強戦に挑戦し続け、名に恥じないグルメだ。
今回、参加するにあたり2020年の本戦で敗れてしまった「アマチュア最強位」という忘れ物をひろうため、予選を逆転勝利してきた。

私がいた控室では名前の最後にある「。」は昔好きだった某アイドルグループから取ったかどうか、ざわざわしていた。

東4局 お手本のような麻雀

「ざわざわさせたい」という発言からは意外(?)に、麻雀はお手本といわれるいい形を作り、リャンメンや打点があるなら愚形で手を組んでいた。この局もかめんたんの仕掛けに対応し、直前で手出しされた【3マン】【5マン】から【4マン】【7マン】が危険と判断。自身にとっては不要牌の【4マン】をとめ、テンパイチャンスは少なくなるものの、安全な【1ソウ】を切ってゆく。

次巡で【4マン】【7マン】を切ればテンパイも、【9ソウ】のトイツ落とし。先手を取られたら打点と形、どちらかが満足いかないと押し返さない。「人の金で焼肉を食べた」がっている人とは思えない。これだけ我慢強い焼肉定食。が点棒を多く持つとなかなか崩れない。

最終的にはドラの【8マン】をツモれば満貫のテンパイでリーチも、結果は流局。少しでも分が悪いと勝負はしない慎重派。

 

南1局

この手牌は1シャンテン。焼肉定食。は一通かドラか形かの選択がある中、ドラ引きを逃さず、良い形を追い求める【2ソウ】切りとした。

 

その間、トップ目の吉永から先制リーチを受ける。ドラの【7ピン】を切れば【6マン】【9マン】のリャンメンテンパイも打点がないため打【9ソウ】と迂回し、ドラ【7ピン】を重ねて追いかけリーチ。見事トップ目からの満貫直撃で一気に勝負がわからない。

 

南3局

ここでトップ目にかなり迫った焼肉定食。の手にドラ3でツモれば三暗刻がつく僥倖のテンパイが入る。ここまでの麻雀をみていて、仮にドラがなく、ツモり三暗刻がなければ、リーチをしていなかったかもしれない。

結果は【2ピン】をツモり、ハネマンの「ボリューミーな」アガリに。逆転し、トップでオーラスを迎え、あと1局しのげば5年越しの勝利目前でしかし吉永が立ちはだかる。
最終局は前述したとおり、淡い裏ドラ4枚を期待するも乗らず。惜しくも2着で終了となった。

 

1着 “人生で2万5千半荘”吉永和生

吉永和生に試合後、おめでとうございますと楽屋で話しかけた。
「手が入りまくっていたし、ツイていました」、謙遜ではなく心からそう思っているように答えた。少しふわふわとした雰囲気で不思議な印象を持ったが、嫌な感じは一切しない。

吉永と最強戦の出会いは古く、20年以上さかのぼる。当時近代麻雀を読んでいたら、最強戦の告知があり、興味本位で大会に出るも惨敗。3年前にMリーグを見始めたことをきっかけに、「観る雀」をするように。そこで再び最強戦を知った。
「何もできなくて敗退したのが悔しくて」、最強戦の予選チケットを4枚申し込む。そんな矢先にアメリカ出張が決まり、キャンセルせざるを得なくなった。

そのときの消化不良が原動力となり、日本に帰国してからは2年連続で予選に参加するように。それまで「人生で25000半荘くらいは打った」吉永はその実力と経験から、予選を勝ち上がった。

対局の話に戻そう。

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