麻雀って、楽しいものだ。
〜黒沢咲、覚悟を胸に。
文・千嶋辰治【金曜担当ライター】2026年5月15日
ファイナル最終日。
私は瀬戸熊直樹へ取材した。
残り2戦。
ここまでの戦いを振り返り、瀬戸熊は真っ先にこんな言葉を伝えてくれた。
「シーズン通しての感想は最終日が終わって初めて本当の気持ちが出ると思いますが、まずはレギュラー、セミファイナルと本当にギリギリだったのでユニバースの皆さんのご声援で通過できたと思っています。感謝の気持ちでいっぱいです。」
そして、この言葉には特に力がこもっていた。
「最高で、最強の応援団でした。」
雷電はこの時点で第4位。
優勝の目は限りなく薄いポジションに追い込まれているが、チームの雰囲気について聞いたところ、実に雷電らしい様子が伺えた。
「チームの雰囲気はとてもいいですね。やはり、ファイナルは楽しく打てる場所なのでそこが大きいと思います。」
どんな時も笑顔が絶えない雷電の控室。
シーズン中は他チームに殺伐とした雰囲気が感じられた時間帯にあっても、内容に厳しく、そして結果に素直で朗らかな雰囲気は最後まで変わっていないようだ。
ただ、今日はいつもの1日とは違う。
下世話な話で恐縮だが、ここはプロの世界。
結果に数百万から1千万の差が生じるわけで、選手にかかるプレッシャーは計り知れない。
その大事な1日。
究極の条件戦に対し、各チームは以下のように選手をぶつけてきた。
第1試合
東家:二階堂亜樹(EX風林火山)
南家:鈴木大介(BEAST X)
西家:佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
北家:黒沢咲(TEAM RAIDEN / 雷電)
このゲームでトップ、あるいは2着をとるとほぼ優勝を決められる風林火山は監督の亜樹。
そして雷電は、ここ一番のハードパンチに定評がある黒沢を登板させた。
東1局、まずは黒沢の立ち上がりを見てほしい。
中盤、黒沢はご覧のイーシャンテン。
「安いんで、
は鳴かないと思うんですよね。」
解説の土田浩翔プロがそんな風に言ったが早いか、亜樹が
を切ると、
「ポン」
黒沢はこの手をポンテンに取った。
ご存知のとおり、黒沢は鳴かない打ち手だ。
ましてや手替わりしなければ1,000点の手。土田プロが言うとおりである。
しかし、黒沢は躊躇なく動いた。
雷電は、今シーズンのあらゆる絶対的な不利を執念で挽回してきた。
人は「最後まで諦めるな」と言うが、では何を目指して諦めないように戦うのか?
優勝はできたらもちろんベストだが、現状は遥か雲の上の話。
まずはその景色が見える場所まで登っていかなければならない。
「1,000点のポンテンと思うと取りたくないんですけど、
を引いてくると打点が上がるので…。」
と対局後に語っていたが、黒沢は時に私を捨てて覚悟を持って動く時があり、この局はまさにそれだったのではないかと感じられた。
トップを奪い、チームに「最後まで上を見て戦える明るさ」を繋げたい…という黒沢の思いに牌が応えた。
「ツモ。」
ドラ表示牌の
を事もなげに手繰り寄せた黒沢。
打点は安いながらも、まずは亜樹の親を落とした。
そして次局の東2局にいきなりクライマックスがやってくる。
ターニングポイントは6巡目。













