遅れてきた高宮まりが3着目から奪ったデイリーダブル【Mリーグ2026-27 観戦記 9/28 第2試合(麻雀2ch)】担当記者 うめきち

まず動いたのは勝又だった。2枚目の【發】を、しょうがないという感じで鳴く。

素点の回復か、中田や高宮からの直撃か。勝又の目論みが見え隠れする。

次に多井が勝負に出た。【南】バックでチー。

勝又に放銃すれば、2着目や3着目に落ちかねない。しかも勝又に満貫を放銃してしまうと、トップ目から一気にラスだ。それでも、多井は前に出た。ここでトップを取って、今季のレギュラー通過を決めるんだ。そんな強い意志を、私は感じた。いつもの多井なら、確実なトップか、落ちても2着を狙う手を選ぶんじゃないだろうか。今までなら、たぶんここまでは勝負しなかった。

対する高宮は、勝又と多井の仕掛けを警戒して、不要な【南】を抑え込んだ。

試合後、その理由を聞かれた高宮は、こう答えている。「自分の手が難しそうだったからです」。

勝又が【6マン】をポンして、ついにカン【4マン】でテンパイ。

多井は勝又に放銃できない。その表情に、意志が宿る。

そこへ、中田が意地のテンパイを入れる。

ここで切る牌が問題だった。【赤5マン】入りの勝又のトイトイに刺さって満貫を打ち込めば、ラスに転落する。実際には勝又の手は満貫ではないのだが、それは中田にはわからない。長考、およそ90秒。

歯を食いしばって考える。

中田は勝又への満貫放銃を避けるため、【5マン】ではなく【4マン】を選んだ。

放銃の重さと、トップの重さを、天秤にかけていたのだろう。

そして、勝又は、その【4マン】を見逃した。

アガれば試合は終わる。しかし、アガってもラスのままだ。素点ではなく、順位。目の前の3900より、もう一局に賭けた。しかも高宮は1人ノーテン気配。流局すれば、満貫ツモで3位に上がれる。その気配まで読んだ上での見逃しだろう。私なら、アガリ牌に手を伸ばしてしまう。手が出そうになる自分を止められるか。勇気のいる見逃しという選択だと思う。

流局。高宮の1人ノーテンで、中田の親テンパイにより南4局は2本場へ進んだ。この見逃しが、吉と出るのか、凶と出るのか。

 

追っかけリーチと【3ピン】

南4局2本場。先制リーチは中田。

その巡目で、高宮が追っかけた。

リーチタンヤオ赤。中田の現物で待って2位を狙うのではなく、トップを狙うリーチである。息をのむ、2人の戦いになった。ベテランの多井と勝又は振らない。だから一牌ごと、中田と高宮がツモるたびに緊張が走る。枚数は最初、中田が2に対して高宮が1。それが途中で1対1になった。まさに互角である。

なぜ、あのリーチだったのか。試合後、高宮は落ち着いた口調で答えている。「トップになりたかったからです」。

そして、中田がツモってきた牌は、高宮のアガリ牌の【3ピン】だった。

ロン。

リーチタンヤオ赤裏、満貫。3着目からのトップである。

悔しさを隠しきれない多井の表情。

そして、アガった直後、ふっと息をついた高宮。

あの息に、どんな思いが込められていたのか。想像は尽きない。

もちろん結果論だ。勝又は3900を見逃して、素点を失った。しかし、結果論で麻雀を語ってはいけない。あの見逃しは、間違いなく強者の選択だった。そしてもしあのとき勝又が4mをアガっていたら、試合はその瞬間に終わっていた。高宮に最後の一局が回ってくることも、なかった。高宮に舞台を用意したのは、皮肉にも、勝又の見逃しだったのである。

 

90度のお辞儀と固い表情

試合後のインタビュー。高宮は、開口一番、深く頭を下げた。

あんなお辞儀は、見たことがない。角度は90度。そのまま3秒ほど、静止していた。何を意味するのか、私には分からない。そのあとは落ち着いた受け答えで、最後にこう結んだ。

「引き続きプラスを重ねられるように、一層真摯に麻雀を頑張っていきますので、引き続き応援よろしくお願いします」。

その表情の固さが、私は気になって仕方がなかった。

この日の高宮は、完全に麻雀に集中していた。私は麻雀で生きていくんだ。そんな覚悟が見えた試合だった。

中田も、高宮も、ベテランの多井や勝又に全く動じず、最後まで戦い切った。多井は勝ちきれず、開幕3連勝とはいかなかった。試合後の悔しい表情が印象的だった。これでKONAMI麻雀格闘倶楽部はデイリーダブルを達成し、4位に浮上した。もともと実力のあるチームだ。ここから勢いが乗りそうな予感がする。

実況の山本亜衣も忘れてはいけない。今シーズンからМリーグの実況を始めたばかりとは思えないほど滑らかで、噛むこともほとんどない。5、6年やっているベテランのような風格で、声質もとても心地良い。

遅れてきた主役は、遅れてきたぶんだけ、強かった。

 

  • この記事が気に入ったら
    フォローをお願いいたします!
    最新の麻雀・Mリーグ情報をお届けします!

  • \近代麻雀 新刊情報/