これは嬉しい、と思いきや…
多井はこの表情。
Mリーグ開幕から徹底して、多井は試合中に喜びの表情を出さないようにしている。いい手のときも、悪い手のときも、押しているときも、オリているときも、ほぼ同じ。まるで放銃したかのような「嫌そーーーー」な面持ちだ。
麻雀は対人ゲームだ。みなさんも経験があると思うが、しぐさや表情がキズになってしまうことも多い。
表情から読み取れる情報をシャットアウトするこの多井の姿勢に、「勝負師」としてMリーグに臨んでいる強い覚悟を感じる。
少し話がそれるのをご容赦いただきたいが、Mリーグ解説のときの多井は真逆だ。努めてTPOに合った喜怒哀楽を出して、番組を盛り上げようとしている。
また、解説のアプローチも毎回違う。「今回は真面目に技術解説を多くしよう」「今日はギャグ多めで明るくいこう」など、毎回テーマを決めているのだと思う。
Mリーグが始まってみなが試行錯誤している中でも、業界第一人者として、多井は人一倍努力と研究を重ねているのが伝わってくる。
これほど試合中と解説でギャップがあると、「いったい本当の多井は明るいのか暗いのか、どっちなんだろうか?」と思ってしまう方もいらっしゃるかもしれない。
ちなみに私が2年ほど前に、とある番組の控室でご一緒させていただいたときには、
『ローストビーフってさー、肉がうまいんじゃなくてタレがうまいんだよねー、タレが』
と言いながら、対局前の食事の時間もずっと喋ってらしたのを覚えている。きっと試合中を除けば明るい方なんだろう。
ローストビーフは肉が美味しいんだとは思うが。
…対局に戻りましょう。
東4局
親番の魚谷、7巡目に、
ドラを切って、くっつきの広いイーシャンテン。
これに対して、即座に対応した多井、
をツモるやいなや、を河に並べる。
危険を敏感に察知して、守備駒を確保。この半荘、積極的に進めることの多かった多井、持ち味のデイフェンスももちろん健在。多井の速度スカウターは正確だ。
南1局
親番で挽回したいラス目の小林、
第一打に役牌のを切ってくる。
それを南家の多井が一鳴き。
その3巡後、多井の手が止まる。
はドラ表示牌、打点アップのためには残したい。かと言って、の形は良形を作るタネだ。どうする…
悩んだ末、多井の出した答えは、
リャンシャンテンに戻す、打。