いや一応見ていると思うが(笑)
「仲田さんがダブをポンしていて、は切りたくありませんでした。ドラまたぎなので3900以上あり、マンガンになったら2着に落ちてしまう」
いや、たしかに言われるとそうなのだが、あと2局となった終盤で、トップが目前で、そして手を伸ばせば届くところにテンパイできるネックの牌が置れているのだ。私なら飛びついてしまうかもしれない。なんという我慢の効く打ち手だろう…と感じた。
マンガはその作者の信念が投影される。片山マンガにメンゼン高打点型の主人公が多いのがよい例だと思う。
逆に鳴き速攻型は「かませ犬」的な立場で登場することが多い。
そして片山の麻雀の根底を支えるのは「爆守備」の鉄壁保ではないだろうか。
鉄壁が、テンパイしていても国士の当たりと読んだ牌を掴み、オリてしまうシーンがある。
ノーテンだと確実に負けるという状況で… だ。その時のセリフ
「鉄壁保はこんな牌を打たない」
を思い出した。
「片山まさゆきはこんなを打たない」
片山まさゆきは、たとえ何十年に1回しか挑戦できない大舞台でも、片山まさゆきとして打ち、片山まさゆきとして勝ちたいのだ。
結局この局は流局した。達也もギリギリでテンパイを入れ、苦しい南3局は続いた。
このような忍耐の続く片山の戦いぶりを見ていたからこそ
このリーチには驚いた。リーチのみのカンチャン待ち。牌を曲げる動作に、よどみは全くなかった。
解説席で誰よりも片山を知るバビィも「おお!いったぁ!」と声を上げて驚いていた。
「ドラが見えたから? いえ、このときはマンズがとても良さそうだったんですよね」
さきほどは自信なさそうに答えていた片山だったが、この時は胸を張って語ってくれた。
たしかに場況は最高だ。
あとのない達也から出アガリ、1300は2200。長い南3局に終わりを告げる、安くとも大きな大きなアガリ。これが決定打になり、片山はファイナリストに名前を連ねた。
苦しい戦いを潜り抜けた片山の顔には、安堵の気持ちが見て取れた。
ハードパンチャーが揃い、気を抜くことができない展開。
その戦いを支え、勝利に導いたのは、片山麻雀の根底である、朧夏月であり、鉄壁保だったと思う。
30年前に起きた奇跡をもう一度みることができるかもしれない。
そう感じさせるのに十分な内容のA卓だった。
(C)片山まさゆき
ZERO(ゼロ)
麻雀ブロガー。フリー雀荘メンバー、麻雀プロを経て、ネット麻雀天鳳の人気プレーヤーに。著書に「ゼロ秒思考の麻雀」。現在「近代麻雀」で『傀に学ぶ!麻雀強者の0秒思考』を連載中。
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