疾風迅雷! 流局なしの
電撃戦を制した瀬戸熊直樹の
立ち回りと駆け引き
文・東川亮【月曜担当ライター】2020年11月9日
「ロン、2000」
第1試合の終わりを告げる瀬戸熊直樹のアガリが出たとき、時刻はまだ20時にもなっていなかった。
試合時間46分、大和証券Mリーグにしては珍しい、早い終局である。
流局なし、わずか9局の電撃戦。
制したのは、スピーディーな展開を巧みに立ち回った瀬戸熊だった。
第1回戦
東家:朝倉康心(U-NEXT Pirates)
西家:茅森早香(セガサミーフェニックス)
北家:前原雄大(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
東2局。
親番の瀬戸熊の手牌は、ターツが3つはあるもののバラバラ、いっそのこと国士無双にでも向かってしまいたいくらいだが、親番ということもあってかから切り出す。
子方に目を向けると、前原がトイツ、朝倉はドラドラ赤と、どちらもアガリに向かいたい形。
先にテンパイを入れていたのは前原。
瀬戸熊に浮いていたを鳴いてカン待ちテンパイ、さらにを鳴いて打点を上げ、待ちもと良い形にする。
一方、瀬戸熊の手も順調に伸びており、中盤にテンパイ。
待ちはと決していいとは言えず、出アガリができ、手変わりもあるためヤミテンに構える。
この変化なら文句なし。
待ちでならタンヤオ平和、なら平和ドラと2翻がつき、十分な打点となる。
ツモ、裏ドラも1枚乗って4000オール。
門前高打点の雷電スタイルでリードを奪った。
東4局、瀬戸熊が1巡目からを仕掛ける。
瀬戸熊は今シーズン、ここまでの副露率は16パーセント台を記録。
2019レギュラーシーズンでの副露率11.8パーセントということを踏まえると、今シーズンの瀬戸熊は比較的鳴きを使うようになっている。
とは言え、安い一鳴きはしない選手である。
この局では手の中にドラが2枚、も対子と、この時点で既に満貫の種がそろっていた。
瀬戸熊は切り出しも工夫する。
1打目からとソーズをバラ切り、手役を匂わせる河を作っていく。
を鳴いたときにホンイツをちらつかせ、しかもマンズ、ピンズの色を絞らせないことで、相手の打牌に制限をかけようという狙いだ。
しかしここは朝倉が早かった。
平和高目三色、ドラ赤内蔵という高打点のリーチで先制を取る。
ただ、ここは瀬戸熊にとっても行くべきところ。
を仕掛け、無スジを打って満貫テンパイを組み、その後は危険牌を押しまくる。
最後は粘ってテンパイを入れた親番前原のリーチ宣言牌が朝倉への放銃となったが、勝負手となればどこまでも強く行く、瀬戸熊らしさが見られた一局となった。
南1局も、独特の進行を見せる。
なんと、第1打からのターツを外し、一色手へと向かったのだ。
解説の園田賢(赤坂ドリブンズ)は2着目の親をのみで流す進行について触れており、そのような選択をする打ち手も少なくなさそうだが、狙えるならば高打点を狙えっていこう、ということだろう。