「片山のif」
最後の親番である片山は、ドラのを切り飛ばし、
太平洋のように受け入れの広い手牌になっていた。そして今ツモってきたこのをさして考えることなくツモ切ったのだ。たしかに受け入れ枚数が雲泥の差なので、一刻も早くリーチを打ちたいこの場面では迷う場面ではない。しかし、朧夏月や八崎慎吾だったら打としていたのではないだろうか?
打でも345の三色を自然に追えるが、三色になるツモはと意外と少ない。そればかりかをツモると微妙なテンパイになるし、最悪メンピンになってしまうツモも結構ある。
その一方で打とすると、ツモで高めタンピン三色のテンパイ、ツモに至ってはタンピン三色確定、残りの受け入れであるツモでもタンピンが確定する。
また、裏目にあたるをツモった際にとすることで、さらに三色率はアップ。
受け入れ枚数は少し減るが、打点は申し分ない。
この点棒状況、親だからこそ「連荘」ではなく「打点」を負うべき場面とも考えられないだろうか。
次の巡目、
をツモって不満ながらノベタンでリーチ。
この一発でツモってきたに、片山は何を思っただろうか。
Ifの世界では、裏ドラ1枚で8000オールのアガリで近藤に並んでいたかもしれない。
しかし無難に打を選んだ現実の世界では流局となってしまった。
ラス前、その片山に最後のツモを残して役満のテンパイが入る。
アガリ牌は、が1枚だけだが山にいた。
その1枚も握りつぶすかのように近藤の手へ収まった。
その近藤は、オーラスも見事自分の手でアガリ切り、
最高で最強の男となった。
果たしてこの結果は運ゲーと言えるだろうか?
野間が開局に放ったリーチドラ1も、近藤なら打たなかったのかもしれない。
渡辺の指の間をすり抜けるように落ちていったを、近藤なら確実に捉えていたように感じる。
片山が手にした豊満な手牌を、近藤だったらタンピンサンショクに仕上げていた気がする。
決して三者の選択は責められるものではない。
しかし、である。近藤だったらどの席に座っても、最強位になっていたのではないか…と、夢想せずにいられない。それくらい近藤の強さが際立つ、ファイナルだった。
阿修羅の形相で戦う近藤には近寄りがたいオーラがある。
しかしひとたび卓を離れれば、やはり私の知っている誠一さんがそこにいた。
誰にも理解できない麻雀で、最高位に続き最強位も連覇してしまう勢いを感じる。
―――物語は、「最強戦2019」に続く。
(C)片山まさゆき
ZERO(ゼロ)
麻雀ブロガー。フリー雀荘メンバー、麻雀プロを経て、ネット麻雀天鳳の人気プレーヤーに。著書に「ゼロ秒思考の麻雀」。現在「近代麻雀」で『傀に学ぶ!麻雀強者の0秒思考』を連載中。
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