麻雀最強戦2018
ファイナル観戦記③C卓編
“或る3分の出来事”
近藤、小林、愛内、紺野
それぞれの最強戦
【ファイナルC卓】担当記者:阿部柊太朗
視点:紺野真太郎
激闘と言う他なかった。
2018年7月29日男子プレミアトーナメント決勝。HIRO柴田×朝倉康心×紺野真太郎×松ヶ瀬隆弥という実力者揃いの卓を制し、紺野はファイナル行きのチケットを手に入れた。いや、もぎ取ったいう表現の方が正しいか。そう思わせるほど力強く魅力的な麻雀だった。
紺野「(最強戦ファイナルは)本当に夢でした。心を鍛えてその日を待ちたいと思います」
嬉しさをかみしめるように語りこそ穏やかだったが、内に宿した魂は熱く燃えたぎっていたことだろう。
そうして迎えた12月9日、最強戦ファイナル。
紺野の夢への挑戦は開始わずか3分で崩れ去った。
開局の親番、一気通貫の狙える好手のはずだった。
7巡目にツモ切ったにロンの声がかかるまでは。
近藤「32,000」
あえて言葉を選ばずに言わせてもらう。こんな不幸があっていいのか?ようやく手にした悲願の舞台。何度も言うが開始3分の出来事だ。
この先の100分という対局時間、紺野は後にこう語った。
紺野「30年の麻雀人生の中で最も長く感じた半荘でした」
この100分が紺野を強くするのだろうか?これから先も続く麻雀人生にどんな影響を与えるのだろうか?この経験が無味乾燥なものにならないようにと、こう締めくくった。
紺野「また戻ってきます」
視点:小林剛
小林「全員がハードパンチャーのイメージ。いつも通りの麻雀が打てるような展開になるといいな」
1回戦トップ取りというルールではあるものの「ポン、チー、ロン、1,000点」と自分の得意な形に持ち込むことが勝利へのカギだと語った。
そのプランは東1局に早くも瓦解した。近藤との32,000という点差を埋めなければならなくなったからである。
親番での4,000オールを含む連荘もあり、東3局時点で近藤と12,000点差というところまで追い詰めた。
だが、この12,000点差が小林を縛り付けた。
南1局、西家の小林はイーシャンテン。
本場と供託で場に1,300点が落ちていることもあり、いつもの小林ならとは迷わずポンしてテンパイに取るだろう。いつもの小林ならば。
同巡、愛内から切られたを小林は鳴かなかった。いや、鳴けなかった。
この点差でこの手牌なら、メンゼンで仕上げて満貫クラスを目指したい。目指すべきである。そういう展開になってしまった。
9巡目にとのシャンポンでテンパイしてリーチに踏み込むが、いつもの小林からすると1手遅れた印象を受ける。
その遅れを近藤は絶対に見逃してくれない。
近藤が1,000点のアガリで小林のリーチをかわす。
小林がやりたかったことを、近藤にやられてしまった。
いつも通りの麻雀が打てる展開ならば…。
このアガリで点差は17,000点に広がってしまった。
南2局、小林は4巡目にこの手牌。
強引に高打点を狙いに行くなら、をまるっと落としてのホンイツを目指すルートとをツモ切っての一気通貫を目指すルートがある。
しかし小林の選択は打。
先ほどとは変わって、アガリ率を最大に取った選択だ。
愛内の最後の親番を落とせば、愛内にはかなり厳しい条件が突きつけられる。
そうなれば次局の自分の親番は実質近藤との一騎打ちになる。そういう算段だろう。
小林「近藤さん、サシでやりましょう」
500・1,000は600・1,100のツモアガり。
南3局の親番、11巡目に先制リーチ。