努力の天才・村上淳が築き上げた「たられば」の具現化【熱論!Mリーグ】

熱論!Mリーグ【Tue】

努力の天才

村上淳が築き上げた

「たられば」の具現化

文・ZERO【火曜担当ライター】2019年1月22日

 

Mリーグもいよいよ佳境を迎え、選手の一打一打に熱がこもってきた。

ちょっと前までは「結構なお手前で…」と、相手の手を褒め称える品評会のような上品な雰囲気があったが、今では選手たちも感情を全面に出して、バチバチと牌をぶつけ合っている。

強打に関しては、私自身は熱い思いを感じることができるので、どちらかというと容認派だが、それをチームやファンが「素晴らしい」とひたすら礼賛するのも違うと思う。Mリーグを見たファンが真似するのも、よくない傾向だろう。

世論をふまえてもう少しうまくやった方がよいのでは…と思う。

もう1つ、どうしても気になることがあるのでついでに言っておこう。

「東〇局・〇本場・供託〇本」の表示位置を変えてほしい。現在は

この位置にある。

どうだろう?対面の捨て牌と重なって、全く見えないのではないかと思う。特にスマホからみる際は全く把握できない。

実はこれが観戦記者泣かせなのである。例えば「東1局1本場、園田の打中がエロ過ぎる」とノートにメモってあったときに、左上の表示を頼みに該当する局を探すので、現在の見づらい表示だとかなり苦労するのだ。

できれば…

ここらへんのスペースに表示するなどの工夫をしていただきたい。あと上の画像のように、東家・南家・西家・北家…やリーチの表示ももっとわかりやすくした方がよいと思う。「余計なものはそぎ落としスタイリッシュに」という方針なのだとは思うが、最低限の情報はわかりやすく伝えてもらいたい。

ちなみに園田の打を調べてみたら…

ここから。これはをポンしたときにと並べることによって、残った三元牌の鳴きやすさを高めようという意図である。なかなかのエロさだ。

それでは本編に入ろう。本日の主人公は…

 

村上淳である。

この画像のように、対局直後の村上は、大抵顔を真っ赤にしている。汗もびっしょりでかなり疲労している感じが伝わってくるではないか。それだけ一戦一戦、全身全霊を賭けて臨んでいるという証だろう。

東2局

村上はこの手牌で2枚目の風牌であるをスルーした。

たしかにバラバラだが、ツモ次第では簡単に満貫になるのでポンする人も多いはずだ。実際にチームメイトの園田は「ポンする」と言っているし、たろうもポンしそうだ。この材料でポンをしないのは勿体ないと感じてしまうが、村上は自分で切ったを残してを切っているくらいなので、守備に重きを置いたのだろう。このへんはスタイルの違いか。

親の石橋がダブをポンしたところで…

現物のを抜いて完全に撤退。

強者は「無駄な放銃」を絶対にしない。

この手牌だったら誰もがオリると思うが、村上の守備力が光ったのは次の局だった。

ここから何を切るか。

を切るのが普通だろう。他の牌は何を切っても激痛のロスが発生する。

しかし村上は少考して…

なんとを切った。

ドラも赤も手役も無い手牌「なんとなくパンパンに構える」ことを嫌ったのだ。

もとから価値が低い手だからこそ、裏目であるをツモってもダメージは小さい。

また、次にをツモったらどうせ出ていく牌だ。

それだったら先にを払っておいてを持ち、守備力を高めておく選択は、非常に理にかなっている。

こう構えておいて…

うまく先手が取れたら攻める。

「リッチ!」

スタジオに響いた村上の声を聞いて20年以上前のことを思い出した。

私が最高位戦に入会したころ、ほぼ同時期に村上もそこにいた。

(熱闘Mリーグより)

当時の面白いエピソードがあればよいのだが、村上は現在と何一つ変わらぬ姿で麻雀と向き合っている記憶しかない。

難しい場面ではうんうんと唸り、鼻息を荒らげ、顔を真っ赤にする。

発声は大きく、常に感情をあらわにして打っていた。

正直、私の抱いた印象はよいものではなかった。

感情を出してアガれるなら世話ないし、プロというものはもっとクールに打つべきだと思っていたからだ。

しかし間違っていたのは私だった。村上はあれから20年間、ずっとあの姿勢のままで麻雀を打ってきたのだ。誰よりも真剣に打ち、誰よりも深く反省する。その行程を一日と欠かさず繰り返し、多くの実績を積み重ね、今の姿がある。

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