…しかし、他家から見たらこの仕掛けはどう見える?
「岩崎がカンをチーした…。聴牌は間近だ!」
と思ったに違いない。
現に井出は岩崎の圧に耐え切れずにピンフノミのリーチを打った。
もはやさっきまでの大三元を狙った男とは思えないリーチだ。それだけ岩崎の幻の聴牌が恐ろしい。
親の松ヶ瀬も対応してしまい、ノーテンで親が流れてしまう。
流局流局の荒らしで、7本場で南場を迎えてしまう。この間にも岩崎はちゃっかり聴牌を入れて流局してノーテン罰符を貰って差が広がっている。
にも拘わらず南1局にはこのアガリ。
タンヤオのみ1300は3400。供託も4本ついているのでマンガン級のアガリだ。
対戦者の心が折れてしまわないか心配だ。
南3局の松ヶ瀬の親番では、松ヶ瀬のらしくないリーチも見えた。
普段の松ヶ瀬ならば、間違いなく打を打ってイッツーか三色の6000オールを狙いに行ったはずだ。
しかし、点差が開きすぎたがゆえに手牌進行にゆとりが無いリーチを打ってしまう。
このリーチがうれしいのが岩崎だけだと気づいているのにも関わらず、打ってしまったリーチだと思った。
その松ヶ瀬の親番も岩崎が自力でけり、オーラスもこのアガリ。
タンヤオツモドラ3のマンガン。
何とこの半荘アガったのは岩崎だけ。3人をヤキトリにするという伝説を作っての完璧な勝利となった。
優勝は岩崎真!
プロ歴は五年と浅いものの、その巧みなゲーム回しと手役で見事な勝ち上がりだと思った。
まさに題名にふさわしい手役の極みだと思った。
プレミアトーナメント決勝でもこの腰の重さと、ゲームメイクを活かせれば決勝はすぐそこだと思う。
小説家に憧れる中で、競技麻雀に惚れ込んだ二十代。視聴者と一緒の視点に立ってわかりやすい記事を書いていきたい新人ライター。