しかしそれは頭でわかっていても、なかなか雀頭のないこの手牌でポンをするのは難しい。
小林「難しいと言うけど、ポンと声を出すだけですよ」
と聞こえてきそうだが、多くの打ち手が1枚目は取り敢えずスルーすると思うし、黒沢なら2枚目でも鳴かないだろう。
小林はのテンパイを入れるも…
ここはそので黒沢が「ツモ・三暗刻」の13002600のアガリ。
南2局。
小林は、特にイーシャンテンからの手牌の運用が正確無比で、とても勉強になる。
この手牌、ピンズの3面張が優秀でその部分を活かすためにかを選びたいところだ。しかし小林は…
を切った!
なるほど、こうしておけばテンパイしたときに必ず三暗刻が付く。
おそらく小林も、
このように三暗刻が絡んでいない手牌だったらペンチャンかカンチャンを払っていったと思う。
「名人に名手なし」
ここらへんの選択は、当たり前と言えば当たり前なのだが、それをミスなく選択し続けることは、簡単そうでなかなかできないものだ。
狙い通り「ツモ・役牌・三暗刻」のマンガンに仕上げた。
小林はここまで10回打ってラスがない。その安定感はさすがの一言である。
3人目は前回とりあげたセガサミーフェニックス・魚谷侑未である。
参考記事→魚谷侑未が牌で語るMリーグで勝ち切るための心と技術5選
これは東2局の配牌だ。
魚谷はこのバラバラの手牌からを打った。
ソウズかピンズのホンイツになればいいな…といったところだろう。
すると…
端牌が集まり…
国士無双に一直線。
…あれ?魚谷の国士って今までに見たことあったっけ?記憶にない。
それくらい、昨季までの魚谷は手なりに打っていた。
昨年不調の魚谷にインタビューしたときに、強く印象に残っている言葉がある。
「周りの速度が想定よりも3巡くらい早いんです」
速攻を仕掛けてもすぐにリーチが入り、押しても引いても損な状況に追い込まれる。
速度で勝負しても勝てないのなら、打点で勝負してやろう!
彼女がそう思ったかはわからないが、何かしらの意識改革があったのは間違いない。
今季はそれがいい方向に転がっている。
とあるプロは言う。
「魚谷こそが実力で選ばれたMリーガー」
だと。
昨年、日本オープン、女流日本シリーズ、王位の三冠を達成し、世間もさすが魚谷!とはなっていたものの、これはもっともっと評価されるべきだという。
日本オープンは協会ルール、女流日本シリーズはWRCルール、王位戦は連盟ルール…と全てルールの違う大会に対応。それも何百人と集まる予選から普通に参加して勝っているのだ。王位戦と日本オープンに関しては一流男子プロに混じった中で優勝している。
そう考えるとたしかにこれは尋常じゃない戦績だ。
麻雀と真摯に向き合い、工夫を重ねて進化していく。
魚谷を見ていると報われてほしいし、報われるべきだと思う。
ただこの半荘は全く報われなかった(笑)
本人も言っていたとおり、4000・8000をアガった後は、展開もよく、まるで危険を冒すことなくトップをとったように見える。
しかしそんな中でも緻密さを感じたのはオーラスだった。
村上はトップ目であり、魚谷の親さえ落とせれば…という場面。
この手牌で村上はなんと