可能性は1%あればいい
新人プロの闘志が生んだ
想像を超える
ジャイアントキリング
【A卓】担当記者:江嵜晋之介2021年10月23日(土)
2021年10月23日、麻雀最強戦2021 全日本プロ選手権が開催された。
予選A卓に駒を進めたのはこの4人
小川稜太
日本プロ麻雀協会所属。プロ1年目の25歳。
麻雀最強戦へは初挑戦で見事ベスト8入りを果たした。
2007年より麻将連合の代表を務める。プロ歴は35年。
獲得してきた数々のタイトルを見ても、別のブロックから出場していそうな選手だが、今年は予選を一から勝ち上がり出場。
古本和宏
日本プロ麻雀連盟所属。
プロ歴8年目にしてなんと全日本プロ選手権ベスト8に3回残っている。今年こそはファイナル出場なるか。
日本プロ麻雀協会所属。
通り名は「日本一よくアガる女」。その名から予想される手数の多い麻雀は、最強戦の舞台でも炸裂するのか。
この全日本プロ選手権、数ある麻雀最強戦の出場枠の中でも異色の枠となっている。
今年も沢山の名場面を見せてくれた最強戦予選だが、どの枠もプロ雀士なら誰でも出場の可能性があるわけでは無い。
その年にタイトルを獲得した選手あるいは何かしら活躍した選手でないと、基本的には出場の権利は得ることができない。
その中で全日本プロ選手権は定員制限こそあるものの、プロの資格を保有する者なら誰でもエントリーが可能な出場枠。
新人・タイトル未経験者にとってはまさに成り上がるきっかけとなる枠なのだ。
そうなると当然参加者の数も、他の枠と比べて圧倒的に多い。
今年はなんと938人が出場を目指しエントリーした。
紹介した4人は単純計算で234倍(0.8%)という途方もない倍率を勝ち上がってきたことになる。
そんな全日本プロ選手権。最強戦では毎回恒例の事前アンケートの結果がこちら。
全日本プロ選手権A卓で勝ちあがるのは誰?
— 麻雀最強戦〈公式〉 (@mjsaikyosen) October 20, 2021
ご覧の通りかなり偏った結果になっている。
なんと言っても百戦錬磨の忍田が82.4%と圧倒的だ。自団体はもちろんのこと、麻雀ファン・他団体のプロからも一目置かれていることがよくわかる。
同団体に所属している、U-NEXT Pirates小林剛プロのツイートも印象的だった。
忍田さんに勝てる人はほとんどいないよ。 https://t.co/nGBnoUfkwk
— 小林剛 (@supatechi) October 20, 2021
忍田の圧倒的支持に目が行きがちだが、もう一つ気になる数字がある。プロ2年目、新人小川の投票率だ。その数値はまさかの1.7%…!!
0.8%を勝ち上がってきた猛者なはずなのに、勝ち上がると思っている人が1.7%しかいないなんて…。
この結果に対して、当の本人は前向きなツイートをしていた。
もはや2%入ってるのすら嬉しい https://t.co/RLzb5UQiHn
— 小川 稜太 (@npm19k001) October 20, 2021
ただプロ雀士としてこんな数字を見せられて、思うところがない訳はない。内心ふつふつと闘志を燃やしていたはずだ。
麻雀最強戦は短期決戦。この舞台は「勝ちたいと強く思っているやつが勝つ」舞台であると、数々のトッププロが語っている。
新人の闘志が勝るのか、それともプロ35年目の矜恃か。決戦の火蓋が落とされた。
東1局
開局早々、先制を果たしたのは忍田。
リーチタンヤオ平和の待ち。
忍田は第一打に、その後のペンチャンをから落とし、さらにを対子落とししている。タンヤオ系でかつ好形のリーチが予測され、ドラがなこともあり他家からは満貫クラスのリーチに見えていそうだ。
この先制リーチに対して親番の小川。
12巡目に
13巡目に
14巡目と無筋を連打していく。
ソーズ・マンズの情報が少なく、通りそうな牌がない。そのため自己都合で真っ直ぐ手牌を育てていく。
忍田の打点が高そうなリーチに対してほぼノータイムでの押し。新人と思えない肝の座りっぷりを見せる。
そして残りツモ番2回というところでなんとドラのを連続で引きアガりをものにする。
ダブドラドラの4,000オール。
続く1本場も2,600オールをツモり大きなアドバンテージを得る。
東2局になった時点で小川は51,000点のトップ。
予選卓は2人勝ち上がりルールのため小川はほぼ安泰となり、序盤戦にして早くも残り1つの椅子を3人で争う展開となる。
東2局
親番となった忍田。またしても先制リーチをかける。
6-9m待ち。高目をツモれば2,600オール以上になる。
小川以外の3人は僅差のため、ここで上がって2着の地位を固めたいところだ。
このリーチを受け、一旦の対子落としで迂回した小川。
9巡目に役無しのペン待ちでテンパイ。
東1局と同様に安牌がないため、無筋のを切り飛ばしダマテンに構えると、なんとあっさりとツモアガり!
忍田の親リーチを蹴る僥倖の300、500。
(忍田プロに投票したみなさん、見てますか?)
小川の闘志に、展開が呼応してくれる。
小川にとっては嬉しい局消化、忍田はチャンスを潰され手痛い親落ちとなる。