5度目のファイナルに挑んだ渋谷ABEMAS。
その前半戦、今週8戦の成績は41231122であった。
白鳥翔、松本吉弘の活躍が目立ち、チームは251.9ptの首位。
2位と120.1ptの差を築いている。
今週の主役は正にショウマツと言っていい。
悲願の初優勝に向けて、二人の若武者がチームを牽引している格好だろう。
しかしその陰で、助演賞とも呼べる奮闘を人知れず果たしている選手がいる。
多井隆晴、その人である。
5月9日(火)の第2試合、東2局2本場。
東家のEX風林火山・二階堂瑠美はこんな手から、ドラのを放した。
ダブ赤ドラで、12000は確保。ドラを1枚切った十分形にするのは当然だろう。
そして10巡目に待望のポン。
打で待ち12000だ。
その直後の12巡目、多井がを掴んだ。
全体図を見よう。
は自身で初巡に切っている牌だ。
瑠美はドラのを先に切っている。
これを多井はしばしの思案の末に──、
手に残して、現物のを切った。
この瞬間を観戦していた仲林圭が、
「第1打の瑠美さんがポンで打。
これはアタマや、、のケースが多く、
その場合は固定のドラ切りがあるからですね」
とツイートしている。
瑠美の手牌も多井の予想も正にその通りであり、
一流は一流を知る、ということが伺えるやり取りだと思う。
しかし、自分の手は待ち頃の字牌3種残ったチートイツ赤のイーシャンテン。
点棒は30000点持ちとまだまだ積み上げたい状況だ。
瑠美はソーズがアタマであろうが、待ちは特に絞れているわけではない。
そもそもをポンしただけで、テンパイかどうかも楽観的に見る人だって少なくはないはずだ。
だが多井は甘えなかった。
瑠美がダブトイツなのにドラのを我先に切ったことは、
好形残りの高打点イーシャンテンをむしろ保証する。
そしてドラ表示牌含め、は5枚見えになっている。
さらに自分の手のアガリ易さと価値。そのバランスを多井は考慮し、オリの一手を選んだ。
「仲林さんの指摘した読みはもちろんなのですが──、
瑠美さんをテンパイと断定できるかどうか、そして自分の手を捨てられるかどうかも重要ですよね」
多井はそのように語る。
確かに、相手の手牌を読むことはある程度できても、その精度に確信を持ち、
それに殉じてオリれるかどうかはまた別問題だ。
誰だって、自分の手を歪めてオリなどしたくはない。
どうにかして切れる理由──、それは残りスジによる確率だったり、点棒状況だったり、
切っても許されそうな理屈を求めたくなるものなのだ。
この半荘、もう一つ印象的なシーンがあった。
続いて西家であるダントツのKONAMI麻雀格闘倶楽部・滝沢和典が追っかけリーチに踏み込んだときだ。
東家だった多井は2軒のリーチを受けながら、13巡目にこの形でダマでテンパイ。
亜リャンメン待ちでがフリテン、が二人に打てないという状況である。
もちろんリーチは出来ず、対応の余地を残して次巡に掴んだのが、滝沢の待ちであるだった。