アガリだけが麻雀じゃないと
教えてくれた“大きな天才”
最高位・竹内元太が示した
麻雀の奥深さ
【A卓】担当記者:後藤哲冶 2023年6月25日(日)
「後藤君、そのは上家のネックの牌だから鳴かせてあげなきゃダメだよ」
私が自団体である最高位戦ルールの勉強会中に、1枚の牌を切ろうとした時のこと。
後ろで私の打牌を見守っていた最高位、竹内元太がそう口にした。
「あの上家の仕掛け出しで、このルールと点棒状況なら役牌持ってないことほとんどないから。で、役牌候補もうその南しかないからね」
なるほど、とは思いつつ、本当にそうなのか半信半疑で私は、手牌の右端に置いてあった南を切り出す。
上家が、恥ずかしそうにポン、と発声した。
今度は親の上家で私がを切ろうとしたときに、またもや声がかかる。
「後藤君そのは切っちゃダメだね。ホンイツやってる親の手牌考えたらその相当ネックになってること多いからね」
確かに親に鳴かれそうとは思ったが、自分が勝負手で前がかりになっていた私は驚かされた。
この手でも打ってはいけないのか、と。
その局は流局し、倒された親のテンパイ形には、ペンが残っていた。
「自分がアガれるのはたかだか25%前後だからね。アガれない局にいかに最善を尽くすかが大事」
全体の状況を観察する力に優れた竹内が、良く口にする言葉。
いつも竹内の麻雀には驚かされ、そして学ばせてもらっている。
比喩的にも物理的にも大きいその背中は、私からすればいつも輝いているように見えていた。
「後藤君、それはリーチだね」
ピンフのみのテンパイを組んだ私が、局の終盤であることもあり、リーチ判断に悩んでいた時の事だった。
待ちは確かに場況が良く見える。
「なんてったって、イーソーがいそう! なんつって!」
……ダジャレのセンスは、いつも壊滅的だった。
タイトルホルダー頂上決戦
東家 忍田幸夫 (永世将王)
南家 浅井堂岐 (雀王)
西家 竹内元太 (最高位)
北家 HIRO柴田 (鳳凰位)
東1局
東家に座る忍田が、この牌姿からを打った。
を鳴く前提ならばターツは足りている。ここはから新たなターツを作るよりも、ダブを重ねた時の打点アップを優先した形。
予定通りを鳴けた忍田が、この形から打。
は雀頭に固定して、ダブ東の重なりは限界まで見る。赤がない最強戦ルールではこういった打点意識が非常に重要になってくる。
を引いて形が良くなった後に、を引いてテンパイ。
打点は1500点になってしまったが、待ちの良形テンパイだ。
そこに勝負したいのが、ドラドラの竹内。
を持ってきて、思考に入る。
ドラを固定するか、なんて選択肢も一応ありそうだが……
竹内の選択は、ツモ切りだった。
親の忍田は、上家に座る柴田が切ったもも鳴いていない。
いわゆる疑似的な中スジになっていた。ここは比較的通しやすいを切りつつ、を先に引けたら勝負。
次巡、を引いてテンパイした竹内。
出ていくのはドラの。
ここはさほど時間を使わずに、を打ってテンパイを外した。
が竹内目線早い段階で全て見えており、ペンは悪くなさそうに見えるが
「あのは固まっていることの方が多い。先引きなら勝負になるけど、ペンは親とめくり合える待ちじゃない」
竹内はそう試合後に話してくれた。