下位陣に立ちはだかった
サクラの鬼
MVPを目指して攻めた
内川幸太郎
文・東川亮【月曜担当ライター】2021年3月8日
レギュラーシーズン、最後の1週間が始まった。
各チーム残り4戦を残すのみとなり、現在のポイント状況がこう。
セミファイナル進出を事実上確定させていると言えるのは、2位のKADOKAWAサクラナイツまでだろう。
3位のEX風林火山ですら安泰とは言い切れず、一方で8位のTEAM雷電も、セミファイナル進出の可能性を十分に残している。
昨シーズンの同じタイミングを見てみると、EX風林火山はすでに敗色濃厚、セミファイナルへの残り1枠をU-NEXT Piratesと赤坂ドリブンズで争っているような状況だった。
比較すれば、今シーズンの混戦具合が一目瞭然である。
抜け出すのか、それとも。
仲間の、そして応援してくれるファンの思いを背に、選手たちは卓につく。
3月8日 第1回戦
東家:瑞原明奈(U-NEXT Pirates)
南家:藤崎智(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
西家:内川幸太郎(KADOKAWAサクラナイツ)
残り試合がわずかとなり、下位チームはどうしてもトップがほしい。
しかし、そのためにはこの男を倒さなければならない。
試合開始時点で個人ランキング2位、直近2連勝中。
本人だけでなくチームも上り調子、すでにセミファイナルはおろかファイナルまで視野に入れようかという状況は、他の3チームと明らかに違う。
この日も東1局からカンに続いてリャンカンのを引き入れ、平和テンパイでリーチ。
親の瑞原の追っかけリーチを受けるもツモアガリ、700-1300と打点こそ安いものの先制パンチを浴びせた。
「勢い」というのは目に見えない不確かなものだが、内川の麻雀を見ていると、勢いの存在を感じざるを得ない。
東3局、親番の内川は仕掛けを多用して前に出る。
序盤からポン、チーと積極的に動き、12巡目のチーでカン待ちテンパイ。
その後、単騎に待ちを変えたところで瑞原のリーチがかかるものの、瀬戸熊からの出アガリで連荘に成功した。
瀬戸熊にとっては、瑞原のリーチに対して手を崩さず粘れる唯一の現物がだった。
藤崎から2900は3200をアガって迎えた東3局2本場では、最初にツモる前からイーシャンテンという、いわゆる「ダブリーチャンス」。
ダブルリーチとはならなかったもの3巡目にカンチャンテンパイ、それが次巡リャンメンに変わったところでリーチを打ち、待ちで追っかけリーチをかけた瀬戸熊からロン牌を捉えた。
実は追っかけリーチがかかった段階で、山にある内川と瀬戸熊のアガリ牌は2枚対7枚と、瀬戸熊の待ちの方が圧倒的に多かった。
思わず「両者の状態の差」とでも言いたくなるような結果である。
この時点で、サクラナイツのポイントは400を超えている。
その大きな要因となっているのが、ここまでに内川が積み重ねた10の勝ち星だ。
「俺には、MVPのために無茶をする権利がある」
東4局、そう言わんばかりに、内川は親の瀬戸熊のリーチに対して猛然と押す。
瀬戸熊が切った安全牌で使えるをポン、を押して待ちテンパイを取り、次巡はをプッシュ。
その後、無スジのを引いて少考。
解説の土田浩翔は「これを切ったら鬼」と語った。