逃げ切りたい鈴木たろう
追い詰める多井隆晴
卓上で繰り広げられる
青春鬼ごっこの結末
文・徳岡明信【遊軍ライター】2023年10月27日
今季絶不調の真っ只中にいるこの男。
現在36人中36位、成績は一位から順に0-2-1-3
この上なくキツイ展開を毎回強いられている。
チームとして昨シーズンの不名誉から脱却するには
まずは、たろうの完全復活が一番の命題ではなかろうか。
爆発力も伴っているが故に、たろうの成績は安定し辛いイメージがあるが、
このままズルズルと不調を引きづってしまえば、咋シーズンの二の舞となってしまう。
鈴木たろうはまだ終わっちゃいない。
チームとして、鈴木たろうとして
浮上のきっかけを掴む為の戦いに今日も歩みを進める。
今日こそゼウスの本領発揮となるか。
第1試合
東家:多井隆晴 (渋谷ABEMAS)
南家:萩原聖人 (TEAM雷電)
西家:鈴木優 (U-NEXT Pirates)
北家:鈴木たろう (赤坂ドリブンズ)
東1局
優が二度受けのイーシャンテン。
先制を取って気持ちいいスタートを決めたいところだ。
親の多井もドラのを重ねてこのイーシャンテン。
今シーズンは2着が続く多井。
そろそろ2着は飽きたであろう。今シーズン初1着を取って麻雀星人の凄みを見せつけられるか。
この試合のメンバーを見るとぶつかり合いの局面が増える展開が予想される。
しかしそのイメージを裏切ったかのような多井のダマテンの選択。
をそっと縦に置いて何食わぬ顔をする多井の姿は意外であった。
多井はダマテンも使うタイプではあるが、それは点況や場況によって柔軟に使い分ける印象だ。
やはり力強いリーチを打ってツモアガる多井の姿がイメージ出来る方が多いのではないか。
東発のフラットな状況でリャンメン待ちのこの手をダマテンに構えた理由を考察してみよう。
まずこの局のフォーカスが当たっているのが發を仕掛けている萩原だ。
とターツ選択が入っていて、とマンズの尖張牌(センチャンパイ)が手から溢れている。
萩原のスタイル的にも東発から安い仕掛けを入れる事は考え辛く、ドラドラや何かしらの手役に寄せた手に見える。
その萩原の現物待ちという事が大きかったのであろう。
萩原の仕掛けに対応した優やたろうからを討ち取れる可能性が高い。
連帯を重視した打ち方をする多井なら、この12000点の手さえ最初にアガリきることが出来ればかなりの確率で連帯を守れる自信があったのだろう。
しかし多井の策略とは裏腹に優が仕掛けて前に出る。
萩原から切られたをチーして待ちのテンパイを入れ、
直後にたろうからが出て2000点のアガリ。
萩原の仕掛けに対応して優がかわし手に切り替えた事により多井の強烈なダマテンを潰すことに成功した。
「リーチで押さえつけておく方がよかったかなぁ…」
と哀愁振りまく顔で天井を見つめる多井。
親リーチによる、他家に好き勝手させないというメリットもある中で選んだダマテンの選択。
今回は裏目に出てしまったが、多井の引き出しの多さを改めて感じさせてくれた局であった。