チームアキレスの現状は、決して悪くない。
シンデレラガールゴモリーの活躍で、チームは大きくプラスポイント。
全体順位は2位で、1位のアトラスとの差もほぼ無いと言って差し支えない。
そんな中で、今日登板するのはえる。
これが神域デビューから3試合目となった。
対局開始直後、えるが、今自身が抱えている想いの丈を語ってくれた。
「チームが良い調子だから。チームの誰かが強い、って言われるのも嬉しいけど、アキレス全体に波が来てるなって、言われたいよね」
思うところは、あるのだろう。
アキレスで獅子奮迅の活躍を見せる、ゴモリー。
チームメイトの勝利を喜びながらも、それにずっと頼りっぱなしでは、いたくない。
序盤苦しんでいた咲乃も、トップを獲得してチームにプラスポイントをもたらした。
その流れに、自分も続きたい。
今日は対戦相手に監督が2人と厳しい卓ではある。
しかしそれは、えるが勝利を諦める理由にはならなかった。
第6節 第1試合
東家 える(チームアキレス)
南家 松本吉弘(チームヘラクレス)
西家 渋川難波(チーム グラディウス)
北家 空星きらめ(チームゼウス)
流局、松本の1300オールで迎えた東2局2本場。
「え?」
親番の松本が配牌を整えると、そこには『立直』の文字。
当然のダブルリーチ。ピンフに赤1と12000が確定している凶悪なダブルリーチだ。
これに飛び込んでしまったのが、えるだった。
自身の手があまりにも良くなり過ぎた。とのイーシャンテン、タンヤオイーペーコー赤まであるこの手は簡単にオリたくは無く。
通っている牌は現状のみ。
となれば一番弱いターツ且つ、外側の牌であるが選ばれるのも致し方ない。
えるはいきなり12000点を失ってしまった。
その後も松本が止まらない。
3本場に6000オール、4本場に4000オールと加点を重ね、なんと僅か5局にして77900まで点棒を積み上げた。
東3局
今度は、親番を迎えたグラディウス監督渋川が襲い掛かる。
まずはチートイツドラドラの勝負手を、松本の追いかけリーチも振り切ってツモアガリ。
これで6000オール。一気に2位争いから抜け出すと。
続く1本場では待ちを一発でツモアガっての4000オール。
苦しいながらようやく上向いてきたチーム状況を、監督の自分が壊すわけにはいかない。
8万点近く点棒を稼いだ松本に、渋川が追いすがる。
そして迎えた東3局3本場。
もう渋川の親を止めなければいけないと松本がリーチ。
そしてトップを取るべく、ダブポンでテンパイを入れていた渋川がそこに全力プッシュ。
軍配は、松本に上がった。
追いすがる渋川からの8000直撃は、トップを決定付ける一撃。
……とここで、ここまで出番がほとんど無い、ゼウス空星の様子を見てみよう。
「俺たちも仲間に入れてくれよぅ! 二人だけで、麻雀しないでよぉ!」
うん、泣いてた。
明確に強いトッププロに、幸運まで味方しては手のつけようもない。
分かっていたことではあるかもしれないが、松本、渋川を含め神域リーグに参加している監督は皆、日本を代表する麻雀のトッププロなのだ。