チームを背負う大黒柱 多井隆晴が守備で示した勝利への執念【Mリーグ2025-26 レギュラーシーズン 観戦記 3/16 第2試合】担当記者 東川亮

チームを背負う大黒柱

多井隆晴が守備で示した勝利への執念

文・東川亮【バックアップライター】2026年3月16日

大和証券Mリーグ2025-26シーズンの終盤戦、注目されるのは何と言っても、セミファイナル進出のボーダーを巡る争いだろう。

3月16日試合前の時点で、ボーダーの6位に位置するのは渋谷ABEMAS。しかし、7位のTEAM雷電とはわずか26.1ポイント差。1試合で簡単に逆転できる程度でしかない。

そして、3月16日はABEMASと雷電による、レギュラーシーズン最後の直接対決。その初戦は、ABEMAS・白鳥がパイレーツ・優の倍満リーチに一発で打ち込んでラス落ち、雷電・本田が2着で凌いだことで、順位は入れ替わった。

第2試合、最後の直接対決に出場したのは、雷電からは瀬戸熊直樹、ABEMASからは多井隆晴。共に百戦錬磨、チームの精神的支柱となる大ベテランが、チームの命運を担い、卓についた。

第2試合

東家:二階堂亜樹(EX風林火山) 
南家:瀬戸熊直樹(TEAM雷電)
西家:多井隆晴(渋谷ABEMAS)
北家:瑞原明奈(U-NEXT Pirates)

結果から記すと、この試合を制したのは現在首位に立つEX風林火山二階堂亜樹だった。

秀逸だったのは南1局、多井の打【8ソウ】からの【6ソウ】切りリーチに対し、

この形から現物の【6ソウ】切り。ドラ表示牌待ちのモロ引っかけリーチは、【2ソウ】【4ソウ】【6ソウ】からのリーチであれば中スジで赤もある【5ソウ】待ちにしそう、そもそも多井は【6ソウ】を切ってのカン【3ソウ】待ちにはしなさそう、という相手の読みを逆手に取る一打だが、亜樹の目からは234三色をケアしてのカン【3ソウ】待ちも読み筋に入っていたという。アガリに色気が出れば打っていてもおかしくなかっただけに、守備力の高さが光る選択だった。

ただ、この試合は本当に際どかった。試合後の点数状況推移のグラフを見ても、瞬間の持ち点は最大33100点、最少17500点と、配給原点の25000点から上下1万点も離れていないロースコアゲーム。そもそも、亜樹のアガリで試合が決着するまでは、誰一人として30000点に到達しなかったのだ。

僅差のままで進んだ試合は、オーラスにクライマックスを迎える。今回は、各者の命運を分けたラスト2局と、その選択について振り返ってみたい。

南4局1本場、瀬戸熊は配牌で789の三色がほとんど完成していた。1本場と供託1本でアガリに1300点が加点されるため、どんなアガリ方をしても1600点差の亜樹を逆転してトップ終了。第1試合でABEMASを逆転した状態からのトップ3着は、ABEMASを蹴落として自分たちの勝ち上がりを濃厚にする、ベストに近い結果だ。

しかし、これがなかなかテンパイしない。そうこうしている内に親番の瑞原が1シャンテン。一度はホンイツを意識したカン【2マン】ターツ外しを見せたが、【4マン】【7マン】受けができたところで軌道修正を図った。瑞原としては、奇跡の逆転突破のためにもまずはトップ、そしてこの親番で稼げるだけ稼ぎたい。現状ラス目で、とにかくアガリを最大まで見た進行を採る。

最初のテンパイは亜樹、【發】ポンからの【7ピン】チーで【3マン】【6マン】テンパイ。アガリ牌が山に3枚、逃げ切りを予感させる待ちだ。

2フーロの亜樹に対し、瑞原もこれ以上は黙ってられんとばかりに【2ピン】チーでテンパイを取る。亜樹にアガられたら試合終了、ラス目の状態でそれだけは避けたい。

挟まれた多井は、まだ1メンツで愚形もあり、全然戦える手格好ではない。少考の末、亜樹がチーした【7ピン】切りでターツを崩す。ここから逆転などと虫のいいことは考えず、まずは瑞原の連荘を願う一打。どうしてもトップが欲しい局面ではあるが、やはり多井は軽々に突っ込んだりはしない。

瀬戸熊もフリテン【1ソウ】【4ソウ】【7ソウ】待ちでテンパイが取れる形になったが、取らずの【6ソウ】切り。出ていく【4マン】は双方に通っておらず、実際に瑞原の当たり牌だった。双方共にしっかりと我慢ができるのは、これまでに数え切れないほどの修羅場をくぐってきた経験の成せる業か。「ダメなものはダメ」、そういう割り切りが大切なことを教えてくれる。

この局は瑞原がツモって700は800オール。このアガリで全員の持ち点が2万点台に乗った。

「お待たせしました、全員集合でございます!」

終盤戦のカギとなる一戦がもつれにもつれ、各チームのファンの熱を表現するかのように、実況・日吉辰哉の声にも力がこもる。

南4局2本場、瀬戸熊は前局より少しだけ条件がキツくなったが、それでもツモは単独トップ、亜樹以外からの出アガリも、1000点で同点トップという状況。それだけに役牌の【南】が配牌でトイツ、それを早々に鳴けたのは僥倖。

5巡目、1シャンテンとなってターツ選択で、瀬戸熊はピンズ払いを選択した。【9ソウ】を瑞原が切っていることや、ソーズとピンズの場況などを比較しての判断というところももあっただろうが・・・

これが裏目で、河に【6ピン】【7ピン】【8ピン】と並んでしまう。

一方、【南】を切った多井も、2シャンテンで長考。リャンメンターツが豊富にあるものの、孤立しているのが【赤5ソウ】。多井は北家で【北】が役牌だが、最低限のミッションとして瀬戸熊の上に行くためには2000は2600が必要、そうなると【赤5ソウ】は是が非でも使いたい牌。

一度は躊躇しつつ、【5マン】を切って3メンチャンの形を決めながら【北】のポンにも備える形に構えた。瀬戸熊の捨て牌から、後に戦いやすいほうを残した、ということか。

瀬戸熊は【6ソウ】チーでテンパイ、【3ソウ】を切って【2ソウ】【5ソウ】待ちに構える。ただ、この【6ソウ】が逆転トップのロンアガリになっていた未来もあり得ただけに、感触の悪さはあるか。

亜樹もカン【6マン】チーでタンヤオのテンパイ、待ちは【2ピン】【2マン】で、打点がタンヤオ赤赤の3900。微差ゆえに、振り込んだ相手をラスに叩き落とす手になった。

次巡、多井が引き入れたのは【2ソウ】。瀬戸熊の待ちにスジで捕まった形になったが、裏を返せば亜樹のチーでアガリ牌が流れた、とも言える。

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