遅れてきた男・新井啓文 意地と個性のぶつかり合いを制し、ファイナルの舞台へ 麻雀最強戦2020「プロ雀士ランキングベスト16大会」観戦記【決勝卓】

新井、無スジを押し切ってピンフテンパイ。

お互いのアガリ牌はそれぞれ山に1枚ずついたが、決着はつかなかった。

南4局2本場

古橋の手牌。

役牌のがトイツ、鳴くか重ねられれば手は早そう。

新井の手牌。

タンヤオでまとめられそうな形だ。

第1打は

2人の手を比べたとき、苦しいのは古橋になる。

役満かそれに近い条件を突きつけられているダンプ、矢島は、それでも条件をクリアしようと必死に手を作る。

役満の中でも出現率が高いのは、国士無双四暗刻

国士無双に向かう者の手にがあれば、まず打ち出されない。

また、古橋はこの手をアガったところで、打点が安ければもう1局、あるいは2局、新井と戦わなければならない。

その間に、ダンプや矢島に逆転手が入ることもあり得る。

その点、新井はこの局を何点でもいいのでアガってしまえばOKだ。

矢島が役満に向かうなら、中張牌も鳴きやすい。

だから新井は、第1打にを打つ。

古橋に重なる前に処理したい牌だし、最悪鳴かれて手が進み、アガられたとしても次がある、という考えだろう。

巡目が進み、新井がタンヤオのイーシャンテンまで手を進めると、古橋が打ち出したをポンしてテンパイ。

古橋もこれを見て仕掛け返し、最後の抵抗を試みるが・・・

最後は新井がをツモ。

タンヤオのみ、300-500は500-700。

最小打点だが、このアガリが分かつ両者の差は、果てしなく大きい。

4位に終わった矢島は、前のめりになったがゆえの放銃が多かった印象。

ただ、それは1半荘勝負の最強戦ならではの選択で、うまくいっていれば彼の勝利もあっただろう。

何より、南1局の「矢島スペシャル」とでも呼びたくなるようなアガリは、確実に最強戦の舞台へ爪痕を残した。

その打ち筋と共に、「矢島亨」の名前と、40代には見えないルックスが脳裏に刻まれたという人は多いだろう。

3位のダンプはアガリが1回のみ。

リーチの空振りも多く、少々恵まれないところもあった。

しかし、無放銃でじっくりとチャンスを伺う様子は、まさにその名に違わぬ「ダンプ」のような重厚さ。

彼もまた、最強戦の舞台で見てみたい打ち手だ。

惜しくも2位に終わり、ファイナル進出はならなかった古橋。

しかし、これまでの鬱憤を晴らすかのようにアガリ倒す様に、爽快感を覚えたファンも多かったのではないだろうか。

南4局1本場のチートイツが決まっていれば・・・。

勝ち筋もあっただけに悔しさもひとしおだろうが、この経験を糧に、さらに魅力的な打ち手として、最強戦に舞い戻ってきてくれるだろう。

そして、優勝してファイナル行きの切符を手にした新井。

ファイナルは、最高位を獲得した2013年以来、7年ぶりの出場となる。

彼は、同じ団体の嶋村俊幸(しまむら としゆき)が出場を辞退したことで出番が回ってきた「遅れてきた男」。

そんな彼が一気に頂点へと駆け上がるというのも、また痛快なものではないだろうか。

新井プロ、ファイナルでのご活躍を楽しみにしております!

 

東川亮

赤入り麻雀、東天紅(三人麻雀)などを愛する、さいたま市在住の麻雀ファン。本業はフリーのライター。飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」にて、オーナーである麻雀解説者・梶本琢程氏との接点が生まれ、その縁をきっかけとしてキンマWebにてライター活動を開始した。
ひがし@Twitter

 

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