新井、無スジを押し切ってピンフテンパイ。
お互いのアガリ牌はそれぞれ山に1枚ずついたが、決着はつかなかった。
南4局2本場。
古橋の手牌。
役牌のとがトイツ、鳴くか重ねられれば手は早そう。
新井の手牌。
タンヤオでまとめられそうな形だ。
第1打は。
2人の手を比べたとき、苦しいのは古橋になる。
役満かそれに近い条件を突きつけられているダンプ、矢島は、それでも条件をクリアしようと必死に手を作る。
国士無双に向かう者の手にやがあれば、まず打ち出されない。
また、古橋はこの手をアガったところで、打点が安ければもう1局、あるいは2局、新井と戦わなければならない。
その間に、ダンプや矢島に逆転手が入ることもあり得る。
その点、新井はこの局を何点でもいいのでアガってしまえばOKだ。
矢島が役満に向かうなら、中張牌も鳴きやすい。
だから新井は、第1打にを打つ。
古橋に重なる前に処理したい牌だし、最悪鳴かれて手が進み、アガられたとしても次がある、という考えだろう。
巡目が進み、新井がタンヤオのイーシャンテンまで手を進めると、古橋が打ち出したをポンしてテンパイ。
古橋もこれを見て仕掛け返し、最後の抵抗を試みるが・・・
最後は新井がをツモ。
タンヤオのみ、300-500は500-700。
最小打点だが、このアガリが分かつ両者の差は、果てしなく大きい。
4位に終わった矢島は、前のめりになったがゆえの放銃が多かった印象。
ただ、それは1半荘勝負の最強戦ならではの選択で、うまくいっていれば彼の勝利もあっただろう。
何より、南1局の「矢島スペシャル」とでも呼びたくなるようなアガリは、確実に最強戦の舞台へ爪痕を残した。
その打ち筋と共に、「矢島亨」の名前と、40代には見えないルックスが脳裏に刻まれたという人は多いだろう。
3位のダンプはアガリが1回のみ。
リーチの空振りも多く、少々恵まれないところもあった。
しかし、無放銃でじっくりとチャンスを伺う様子は、まさにその名に違わぬ「ダンプ」のような重厚さ。
彼もまた、最強戦の舞台で見てみたい打ち手だ。
惜しくも2位に終わり、ファイナル進出はならなかった古橋。
しかし、これまでの鬱憤を晴らすかのようにアガリ倒す様に、爽快感を覚えたファンも多かったのではないだろうか。
南4局1本場のチートイツが決まっていれば・・・。
勝ち筋もあっただけに悔しさもひとしおだろうが、この経験を糧に、さらに魅力的な打ち手として、最強戦に舞い戻ってきてくれるだろう。
そして、優勝してファイナル行きの切符を手にした新井。
ファイナルは、最高位を獲得した2013年以来、7年ぶりの出場となる。
彼は、同じ団体の嶋村俊幸(しまむら としゆき)が出場を辞退したことで出番が回ってきた「遅れてきた男」。
そんな彼が一気に頂点へと駆け上がるというのも、また痛快なものではないだろうか。
新井プロ、ファイナルでのご活躍を楽しみにしております!
東川亮
赤入り麻雀、東天紅(三人麻雀)などを愛する、さいたま市在住の麻雀ファン。本業はフリーのライター。飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」にて、オーナーである麻雀解説者・梶本琢程氏との接点が生まれ、その縁をきっかけとしてキンマWebにてライター活動を開始した。
ひがし@Twitter