守備だけでは麻雀は勝てない!巧みな攻守のバランスを見せた鈴木達也、前田直哉が決勝卓へ 麻雀最強戦2020「鉄壁のディフェンスマスター決戦!」観戦記【A卓】

達也のアガリにおいて、暗槓は非常に大きな意味を持っている。

手はタンヤオドラの2翻だが、暗槓をしたことで符ハネしたのだ。

計算すると、

「20符(アガリ)+16符(3p暗槓)+2符(7pポン)+2符(カンチャン待ち)+2符(ツモ)」=42符

つまりこのアガリは50符2翻、800-1600の加点となり、達也は4700点差でトップ目にいた前田を100点だけ逆転した。

オーラスの時点で達也が前田を100点でも上回ってトップに立っていれば、村上の逆転ツモが成就したとしても、2着で勝ち残れる。

つまりこの100点は、両者の命運を大きく分けるといっても過言ではない差になっているのだ。

視聴者の方の中には符計算は苦手な方もいらっしゃるかもしれないが、符計算を覚えることでこうした細かい機微も楽しめるようになるため、可能であればチャレンジしてみることをおすすめしたい。

オーラス

この局は基本的に、達也と前田が二人がかりで試合を終わらせるために動くことになる。

長引けば、どんな不利益を被るか分からないからだ。

特に前田は、この局を一刻も早く終わらせたい。

4巡目、達也がポン、役をつける。

その達也が切ったを前田がチー、こちらはタンヤオへ。

この前田の動きで意図をくんだのだろう、達也はソーズの形から、あえてを切った。

親の現物を残す意味合いもあったか。

これを前田がポンして待ちテンパイ。

さらに達也にも待ちテンパイが入る。

どちらがアガっても勝ち上がりはこの二人、村上と大和にとっては絶体絶命だ。

大和は、どうしてもリーチと言いたい。

彼がリーチをかければ、他3者はおいそれと向かっては来られなくなるからだ。

しかしトイツのを外せば3枚目を引き、からを外せば引き戻す。

今日は、最後まで選択がかみ合わなかった。

 

最後、鳴けばテンパイとなる4枚目のを見送ったのは、彼なりの矜持のようなものがあったのだろうか。

一方、村上も苦しんでいた。

達也、前田の仕掛けを見れば、敗退は目の前まで迫っていることは分かっていたはずだ。

だが、最後に間に合った。

くしくも試合前に金本実行委員長が言っていた「13巡目」(鳴きがあるので実際は1巡多いが)。

村上、を切って待ちの3面チャンテンパイ。

リーチドラ1、逆転条件はツモ(※前田と同点になるが、その場合は上家の勝ち上がり)か大和以外の二人からの直撃、あるいは偶然役が一つ絡むこと。

大和からの出アガリ2600では届かないが、裏ドラ期待で倒すか、見逃すか、そのラインは残り何巡に置くのか。

そのものも決して安全とは言えないが、切ることは決まっている。

当然のリーチ判断に時間をかけたのは、自身の中で全ての可能性をシミュレートし、考えを定めていたのだろう。

「リッチ」

いつもの元気さはない。

絞り出すような声で、村上はリーチを宣言した。

運命の一発目。

 

勝敗が決した瞬間だった。

4位に終わった大和としては、非常に苦い経験となったことだろう。

放銃が続き、自身は一度もアガれず。

ただ、一度たりとも鳴かずにひたすら門前でリーチをぶつけるという「大和らしさ」は存分に発揮していたと感じた。

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