理想と現実の狭間で…TEAM雷電・萩原聖人の苦悩【Mリーグ2020観戦記10/23】担当記者:真中彰司

凛とした発声とともに、突如として横に曲がった。その声の主は岡田だった。

その中身はダブルリーチ・ドラ3の待ちという、配牌とは思えない超大物手。

ロンでも最低満貫、ツモれば跳満。さすがにこれはヤバい。反則だ。

麻雀の神様はこんなにも残酷なのか。

萩原は放銃してもツモられても、やっと得た点棒を失ってしまう。

初アガリを決めてこれからという大事な場面で、こんな逆境に立たされるとは…

ただ流局を願って、素直に降りていくしかない。

岡田は暗槓でさらに打点を上げてツモを狙っていく。

を暗槓するときは、赤ドラを見えるように表にするのが一般的。

しかし17回のツモは虚しく空振り、流局となった。

萩原からしてみれば、ギリギリで助かったと言えるだろう。

東4局1本場

ダブルリーチの局以降、戦える手牌にならずに息をひそめていた萩原。

幸いにも大きな点棒の移動は起こらず、ついに戦える手牌がやってきた。

理想はもちろん、789の三色。すぐにイーシャンテンまで持ってきた。

しかしツモで手が止まる。

受け入れを重視するなら、そのままツモ切る選択がマジョリティだ。

しかし、その席の主は萩原。ゆっくりと場を見渡した萩原は…

ではなく、を打った。

萩原の理想はただの789の三色ではなく、もう一歩先にあった。

ドラのをもう1枚引いて、跳満や倍満を狙おうとしていたのだ。

傍から見れば異形の落としだが、実は一理ある。

場にマンズが高く、はほとんど残っていなかったのだ。

このあたりは打点に振り切った萩原の選択が功を奏した。

安目のを引いて待ちのテンパイ。は3枚切れで789変化の目は薄いが、萩原としては当然のダマテン

ここまでは良い。問題はこの後なのだ。

白鳥からリーチを受けたところで…

一発目にを引いてきた。

なんと萩原は、現物のを切って、のシャンポン待ちでリーチを掛けたのである。

なぜだ。なぜそうなった。

たしかにはドラ跨ぎで、一発で放銃すれば満貫クラスの失点になる。

「現実」を見れば、譲って切りという選択肢は分かる。

ただ、リーチするにはあまりにも待ちが悪すぎる。そして何より、自らが理想としていた高打点を、自ら捨ててしまったのだ。

己のこだわりを捨ててしまった萩原を、麻雀の神様があざ笑う。その結果として現れたのは、白鳥の目の前で力なくツモ切られる

そして立て続けに、が白鳥の手元に引き寄せられる。

高打点にこだわって残したはずの待ちを、なぜ捨ててしまったのか。

を勝負していれば満貫のアガリがあっただけに、非常に残念な一局となった。

結局この後の萩原はキレが無く、3着でオーラスを迎える。

倍満ツモで逆転。は三色の種として残しても良さそうに見えるが…

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