凛とした発声とともに、突如として横に曲がった。その声の主は岡田だった。
その中身はダブルリーチ・ドラ3の待ちという、配牌とは思えない超大物手。
ロンでも最低満貫、ツモれば跳満。さすがにこれはヤバい。反則だ。
麻雀の神様はこんなにも残酷なのか。
萩原は放銃してもツモられても、やっと得た点棒を失ってしまう。
初アガリを決めてこれからという大事な場面で、こんな逆境に立たされるとは…
ただ流局を願って、素直に降りていくしかない。
岡田は暗槓でさらに打点を上げてツモを狙っていく。
※を暗槓するときは、赤ドラを見えるように表にするのが一般的。
しかし17回のツモは虚しく空振り、流局となった。
萩原からしてみれば、ギリギリで助かったと言えるだろう。
東4局1本場
ダブルリーチの局以降、戦える手牌にならずに息をひそめていた萩原。
幸いにも大きな点棒の移動は起こらず、ついに戦える手牌がやってきた。
理想はもちろん、789の三色。すぐにイーシャンテンまで持ってきた。
しかしツモで手が止まる。
受け入れを重視するなら、そのままツモ切る選択がマジョリティだ。
しかし、その席の主は萩原。ゆっくりと場を見渡した萩原は…
ではなく、を打った。
萩原の理想はただの789の三色ではなく、もう一歩先にあった。
ドラのをもう1枚引いて、跳満や倍満を狙おうとしていたのだ。
傍から見れば異形の落としだが、実は一理ある。
場にマンズが高く、はほとんど残っていなかったのだ。
このあたりは打点に振り切った萩原の選択が功を奏した。
安目のを引いて待ちのテンパイ。は3枚切れで789変化の目は薄いが、萩原としては当然のダマテン。
ここまでは良い。問題はこの後なのだ。
白鳥からリーチを受けたところで…
一発目にを引いてきた。
なんと萩原は、現物のを切って、のシャンポン待ちでリーチを掛けたのである。
なぜだ。なぜそうなった。
たしかにはドラ跨ぎで、一発で放銃すれば満貫クラスの失点になる。
「現実」を見れば、譲って切りという選択肢は分かる。
ただ、リーチするにはあまりにも待ちが悪すぎる。そして何より、自らが理想としていた高打点を、自ら捨ててしまったのだ。
己のこだわりを捨ててしまった萩原を、麻雀の神様があざ笑う。その結果として現れたのは、白鳥の目の前で力なくツモ切られる。
そして立て続けに、が白鳥の手元に引き寄せられる。
高打点にこだわって残したはずの待ちを、なぜ捨ててしまったのか。
を勝負していれば満貫のアガリがあっただけに、非常に残念な一局となった。
結局この後の萩原はキレが無く、3着でオーラスを迎える。
倍満ツモで逆転。は三色の種として残しても良さそうに見えるが…