待望のドラを引いた瀬戸熊。5枚見えのを嫌って、とカンのイーシャンテンに構える。
次巡、
を引き入れてテンパイだ!
「リーチか!?」
という実況席の声。モニターの前で私もそう思った。
だが、
瀬戸熊直樹は牌を縦に置いた。
親番でいち早くリーチに行きたい局面。しかし、これは瀬戸熊にとっての最終形ではないのだ。
引きでの三色。引きでの三面張。引きでのとのシャンポン待ち。
そして、
この引きでの単騎変化がある!ここでもまだダマだ!
思えばこの半荘、徹底して悪い待ちや半端な手格好での勝負を避けてきた瀬戸熊。
もう前回のような後悔はしたくない。運命を託せる手が来るまで、じっと待つ。
そんな瀬戸熊の内に秘めた思いが、選択の数々に表れているように感じた。
だが、巡目が立てば他家が攻めてくる。
ここで園田がをチー、ソウズに向かう。
続けてを降ろす。園田がハネマンをツモっても多井はトップ。ここはサービスセンターの役目を果たして園田の手を進め、魚谷と瀬戸熊を押しとどめるのが狙いだ。
瀬戸熊が次に引いたのは、
ション牌のだ!
どうする。園田はもう2副露だ。猶予はあまり残されていない。
瀬戸熊は、
単騎のダマに構えた!!
染め手がいる以上、ション牌のはいい待ちとは言い難い。マンズとソウズの待ちごろの牌が来たらを切って勝負。それまでは絞りもかねてを切らずに待ちとしておく考えだろう。
瀬戸熊の持ち味である、懐の深い麻雀だ。
そして、
絶好のを引いた!ついにリーチを放つ時が来た!!!
は園田がトイツだったが、
ポンをせずに切っていくことを選択。瀬戸熊一人テンパイ流局での、次局満貫ツモ2着条件に賭けた。
は山にはあるが、他家に流れてなかなか瀬戸熊はツモれない。
どんどん山が短くなっていく。ツモれないのか…という瀬戸熊の心の声が聞こえてくる。
瀬戸熊最後のツモ番、
ガシッという音とともに、瀬戸熊の手に巻き込まれたが姿を見せた!
リーチツモドラ。瀬戸熊の辛抱が実った4000オール。この一閃でトップ目に立った瀬戸熊は、
南4局1本場、
終盤にツモアガリを拒否。園田の仕掛けに対して多井と魚谷が手を崩していると判断。いたずらに局数を増やすことなく、オリ切ってノーテンを宣言した。
瀬戸熊が前回の雪辱を果たすトップを獲得した。
わずか一戦で、自分の麻雀を立て直した瀬戸熊。意志と心臓の強さを感じた半荘であった。
瀬戸熊もこのトップは嬉しかったに違いない。
試合後、ファンに手を振る姿は喜びに満ち溢れていた。
京大法学部卒の元塾講師。オンライン麻雀「天鳳」では全国ランキング1位。「雀魂」では4人打ち最高位の魂天に到達。最近は、YouTubeでの麻雀講義や実況プレイ、戦術note執筆、そして牌譜添削指導に力を入れている、麻雀界では知る人ぞ知る異才。「実戦でよく出る!読むだけで勝てる麻雀講義」の著者であり、元Mリーガー朝倉康心プロの実兄。x:@getawonarashite