それぞれのチーム事情が
織り成すオーラスの葛藤
文・渡邉浩史郎【金曜担当ライター】2022年1月14日
【第2試合】
東家:滝沢和典(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
南家:勝又健志(EX風林火山)
西家:黒沢咲(TEAM RAIDEN / 雷電)
北家:沢崎誠(KADOKAWAサクラナイツ)
1/14㈮本日二戦目は……
オーラスを迎えていた。
「東場は自由演技、南場は規定演技」という格言があるが、オーラスはアガリがそのまま着順の確定につながるため、特に個々人の狙いがはっきりしてくる場面だ。
これが完全順位制やワンデー大会であれば、配牌を見て全員がその半荘の着順・収支が最大になるように方向性を定めるだけである。
しかしMリーグはポイントが積み重なるリーグ戦。この重みがどこまで選択にのしかかってくるか。そんな背景にあるチーム事情を添えて、本オーラスを振り返ってみよう。
【TEAM 雷電:黒沢の事情 ~チームを救うHEROになりたい~】
黒沢はトップの勝又をまくるには跳満ツモが必要な2着。現実的には三着目ラス親の沢崎との3500差を守り切るのがテーマになりそうだ。
貰った配牌がこちら。なんと両面両面のダブリーチャンス。しかしこの形ではほとんど跳満は見込めないが……。
残り43戦、雷電は既にレギュラーシーズン敗退のがけっぷちに立たされていると言っていい。取れるトップはなんとしてももぎ取っていきたい。
二巡目、引いてきたでイーシャンテンを崩す切り。メンタンピン方向に大きく舵を切った。
最終的にドラ単騎でのリーチを敢行。ツモって偶然役二つ以上で跳満。正直厳しいと言わざるを得ないが、それでも確実にトップへの細い糸を手繰り寄せた。
【EX風林火山:勝又の事情 ~理外の松ヶ瀬五連投の果てには~】
トップ目勝又。もともとかなりスリムに構えていたオーラスであったが、リーチを受けて完全にやめ。現物を抜き打つ。
一時期は風林火山一強とまで言われていたMリーグ2021。悪夢のような年末を過ごし、チームポイントは4位まで陥落。直近は異例の松ヶ瀬五連投でチームポイントを維持し続けてきた。
オーラスに条件を突きつけるため、前局親の黒沢のホンイツ仕掛けにぶつけてまでアガり切っている。見事軍師の策は成功、黒沢にきつい条件を押し付けた。
人事を尽くし、後はこの局の天命を待つのみ……
【KONAMI麻雀格闘倶楽部:滝沢の事情 ~4人で4連敗を断ち切るためには~】
この半荘、打牌が放銃に繋がり続けた滝沢。大きなラス目でのこのオーラス。
着順アップ条件は黒沢・沢崎からの跳満直撃か倍満ツモ。
当然黒沢のリーチは着順上昇の機会。とはいえさすがにこの二枚切れカンではまだリーチには行けない。聴牌を取ってダマだ。
しかし引いたのはその二枚切れのカン。ツモ宣言をすればそこで終局、1000・2000にリーチ棒一本の5ptを持ち帰ることとなるが……
滝沢の選択はアガらず。ここでこの半荘を終わらせるよりはドラ引きでのピンフ手替わりや一発・海底などの絡んだ着順上昇のアガリ。もしくは親番沢崎の聴牌連荘や黒沢からの高打点和了など、ラス目であるが故のわがままさ、”自分に都合のいい未来”を期待しての選択となった。
もちろんこのわがままは自身のためではなく、3連ラスを引いているチームの空気を変えるため。風林火山を追い落としてトップに立っていたチームもいまや五位。自分を買ってくれたチームのためにも、ここで悪い流れを断ち切りたい。
黒沢の一発放銃+裏か自身の一発海底ツモ+裏に賭けた、滝沢のツモ牌のがそのまま横に曲がった。
【KADOKAWAサクラナイツ:沢崎の事情 ~2021初トップを取ったチームメイトに捧ぐ~】
ラス親の沢崎。なんとか聴牌で粘りこみたいものの、自身の河を見ても上家:黒沢の河を見ても聴牌しようがない状況。
最終手番、ゆっくりと大きなモーションで持ってきた牌は……
聴牌とならず。
「まあ今日はうちの岡田がトップを取ってくれたのでいいでしょう。」
そんないつも通りの慈愛にあふれた瞳で滝沢と黒沢の聴牌形を確認。